加藤拓也×窪田正孝の初タッグも実現! 『滅相も無い』キャストが担う“劇中劇演出”に期待
新シーズンがはじまり、続々と注目作の放送がスタートするテレビドラマシーン。作品の趣味趣向は人それぞれだが、4月期のドラマの中でもっとも注目しているのは『滅相も無い』(MBS/TBS)だ。作品情報が発表された時点で、「これはヤバいぞ!」と声を上げたのは私だけではないだろう(冗談ではなく本当に声が出た!)。脚本と監督を務めるのは俊英・加藤拓也。キャストは中川大志をはじめ、“全員主役級”の顔並びである。
本作が描くのは、突如日本に現れた7つの巨大な“穴”をめぐる物語。穴の出現に人々は混乱し、さまざまな調査が行われるが、この穴が何なのかはいつまで経っても解明されない。いつしか穴との共存がはじまり、その中に入っていく者も。しかし、帰ってきた人間は誰もいないらしい。やがて穴を神だとする小澤(堤真一)という男が登場し、「穴の中には救済がある」と説く。穴を信仰する彼のもとに8人の信者が集い、ここから物語がはじまるのだ。
本作を手がける加藤監督のことをまだよく知らない人という人のために、彼のプロフィールを説明しておきたい。「劇団た組」を主宰する彼は、演劇領域で数々のオリジナル作品を発表し続ける一方、『平成物語』(2018年/フジテレビ系)で初めてテレビドラマの脚本を担当。以降は『俺のスカート、どこ行った?』(2019年/日本テレビ系)や『死にたい夜にかぎって』(2020年/MBS・TBS)、『きれいのくに』(2021年/NHK総合)などを世に送り出してきた。
さらには2022年に映画『わたし達はおとな』で長編劇場デビューを果たし、翌年には『ほつれる』を発表。リアリスティックな作劇と演出によって炙り出される“人間の本質”のようなものに触れるたび、いつもゾッとさせられる。現在は『滅相も無い』にも出演している堤が主演を務める舞台『カラカラ天気と五人の紳士』が上演中だ。
そんな加藤が手がける『滅相も無い』は、SFヒューマンドラマらしい。たしかに、“穴”と人間が共存する設定はSF的だし、強烈なビジュアルもSF感がハンパない。本作では穴の信者である8人の男女が小澤のもとで、ある種の儀式のようなものを行うさまが描かれるのだという。それは、穴に入る前に「なぜ入ろうと思ったか」を個々が話し、記録するというもの。穴に入る者たちに課されたルールだ。各人の内面を掘り下げる危険な行為であり、話す者も聞く者も、おそらく誰もが傷を負うことになるのではないだろうか。
加藤はそのようなシーンの連なりを、“映像的手法”と“演劇的手法”をミックスさせて立ち上げるらしい。信者たちが語る物語はすべてスタジオセットで再現され、個々の人生に関わる登場人物はたった6名のスタジオキャストがすべてこなすらしい。つまり、テレビドラマの中で演劇が展開するわけだ。劇中劇というものは多くの作品に登場してきたが、本作はちょっと、いや、だいぶ違う。劇中劇の場面転換などもスタジオキャストが担うというのだ。現場の緊張感は画面を通して私たちにまで伝播してくるだろう。