『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』青山剛昌ワールドが融合!? 物語の重要な転換点に

 そんな平次と相思相愛であるにもかかわらず、言葉にできずにいる遠山和葉との関係も今作の見どころで、ある意味メインストーリーと言えるかもしれない。もどかしい2人に箱館で医学生をしていて、居合いの達人でもある福城聖という青年が割って入り、和葉にアプローチをすれば平次の方には第21作『名探偵コナン から紅の恋歌』に登場し、平次への熱愛ぶりを見せた大岡紅葉が執事の伊織無我と共にちょっかいをかける。

 そんな紅葉の行動が、北海道の観光スポットめぐりになっていて、中心的な舞台となっている函館も含めて北海道への興味を誘ってくるところも今作の特徴と言えそうだ。タイトルにも絡んでいる、函館山から見下ろす100万ドルの夜景がどれだけの美しさなのか、アニメで描かれたものではなく実物を見てみたいと思わせる。シンガポールに行きたいと思わせた『紺青の拳』以来の“ご当地コナン”と言えそうだ。

 キャラクターでは平次と和葉に続いてキッドの活躍も目立つ。変装の名人とはこういうことだといった姿を見せてくれるし、謎解きのストーリーにも神出鬼没ぶりを発揮して絡んで物語を進める。ただ、キッド自身に解決しなければならない課題があって、それに挑むようなドラマにはなっていない。コナンも同様に、毛利蘭との関係が何か進展する訳ではない。その意味では、キャラクターのファンの全員が喜べるオールスターキャストの映画と言えるかもしれない。

 何しろ『YAIBA』が主戦場の沖田総司が出て来て鬼丸猛も出てくる。『まじっく快斗』でキッドを追い続ける中森銀三警部も出て来て、娘の中森青子も登場してはコナンの顔をまじまじと眺めて何かに思い至る。なぜか工藤新一の父親の工藤優作と母親の工藤有希子まで出てきて仲睦まじげな様子を見せるが、そうしたキャラクターたちの総ざらいを、単なるファンサービスでは終わらせない事態がやがて起こって観客を震撼させる。

 これがヤバい。マジにヤバいのだがどうヤバいかは映画を観てのお楽しみ。言えるのは、ここからどのような展開となり、そしてどのような融合が果たされるのかといった興味がググッと湧いてくるということだ。もしかしたら、コナンと今作では完全にサブに回っていた灰原哀にとって重要な、黒ずくめの組織の問題とも関わっていくのかもしれない。

 つかず離れずの腐れ縁のような関係を続けて物語を長引かせるのではなく、何か大きな賭に出たような最新作。だからこそ2025年公開の次回作に流れた超絶イケボイスのキャラがどう絡み、何が起こるのかが今から楽しみで仕方がない。

■公開情報
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(100まんドルのみちしるべ)』
全国東宝系にて公開中
原作:青山剛昌
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン)、山崎和佳奈(毛利蘭)、小山力也(毛利小五郎)、山口勝平(怪盗キッド)、堀川りょう(服部平次)
スペシャルゲスト:大泉洋
主題歌:aiko「相思相愛」(ポニーキャニオン)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント
配給:東宝
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