『ブギウギ』息子と孫への愛を貫いたトミ スズ子の“残された者”としての物語

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で、主人公・スズ子(趣里)の人生に関わる人がまた一人この世を去ってしまった。愛助(水上恒司)の母・トミ(小雪)だ。

 皮肉にも、彼女は息子と同じ肺結核という病状で亡くなった。振り返れば愛助が大阪で療養していた時、マスクをせずに息子につきっきりで看病をしていたトミ。感染する病気だからこそ、もしかしたらあの時に移っていたのかもしれない。トミはその後、スズ子と生まれて間もない愛子に会いにきている。最後までスズ子と愛助の結婚を許さなかったトミは、頑なだった自分の気持ちの理由や背景を吐露した。本来なら怒りを向けても仕方なかったスズ子も、大きな心でトミに向き合い、両者が和解したのが印象深い。

 あの時、トミは愛子を引き取るとさえ申し出ていたがスズ子が自分で育てると伝えると、すんなり引き下がった。その後も孫の人生に関わっていくと言っていたにもかかわらず、その後彼女が東京に訪れた様子はない。もしかしたらスズ子と和解した後、自身も肺結核を発症し、そのことを黙っていたのだろう。自分の孫やスズ子に迷惑をかけないように。具合が悪いことを隠して、着丈に振る舞う様子はなんだか息子の愛助と同じで、こんなところで「親子なのだなあ」と感じさせるのも切ないものだ。

 思えばトミはスズ子と愛助を離れ離れにさせた張本人でもある。彼が最期にスズ子に会えなかった原因がトミと言っても過言ではない。しかし、むしろ彼女が彼らの間に物理的な距離を作ったことでスズ子は今も元気でいる。もしあの後も東京の家でスズ子が看病を続けていたら、彼女だって感染していたかもしれないのも事実なのだ。そういった意味で、トミはスズ子と愛子を生かした。彼らが今日、彼女の葬儀に参加できるのもトミの厳しいが現実的な判断によるものだというのが、また何とも言えない。

関連記事