なぜ令和に『ガンダムSEED』?  新作劇場版が異例の大ヒットを巻き起こしている理由

 まず『ガンダムSEED』の放送で目に見えて増えたのが、女性ファンだ。この点に関しては、同じく女性人気が高かった『新機動戦記ガンダムW』の成功が活かされているのかもしれないが、それを凌駕するほどに女性ファンの盛り上がりが目立っていた。

 そして新規層開拓という点では、同作がいわゆる“アナザーガンダム”の設定だったことも追い風になった。『ガンダム』シリーズには初代『機動戦士ガンダム』と同じ世界観を共有する「宇宙世紀」と、独立した世界観を持つアナザーガンダムがあり、『ガンダムSEED』は後者。過去作を知らなくても問題ない設定だったため、誰でも“初ガンダム”として飛び込むことができた。

 さらに休日の夕方という放送時間帯も、当時の視聴環境を考えると大きな要素ではないだろうか。というのもネット上の動画配信サービスが普及する以前の時代には、リアルタイムで視聴できない視聴者は欠かさず録画などを行うしかなかったからだ。リアルタイムで観やすい時間帯だった時点で、新規層が入りやすい作品と言える。

 「ガンダム」という言葉で敷居が高いと感じてしまう人もいるなか、『ガンダムSEED』シリーズはさまざまな意味でライトなアニメファンも観やすい作品だったのだろう。これは小学生以下の層を巻き込むことにもつながり、「第二次ガンプラブーム」と呼ばれる現象まで引き起こした。そう考えると同作のリアタイ世代と呼ばれる人々は、想像以上に幅広いのかもしれない。いくら話題作とはいえ、これほどまでに好調なスタートダッシュを切れたのは、ファン層の厚さが影響しているはずだ。

 さらにいえば、ここ最近ガンダムシリーズから『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』といった大ヒット作が次々生まれていることも、ポジティブな意味をもつはず。初めてシリーズに興味を持った人からすると、“次に観るガンダム”として、『ガンダムSEED』はかなりとっつきやすい。

 個別の作品がヒットすることで、シリーズ全体が盛り上がり、さらにその逆の現象も引き起こされる……。これこそがガンダムシリーズという巨大コンテンツの強みではないだろうか。

■公開情報
『機動戦士ガンダム SEED FREEDOM』
全国公開中
声の出演:保志総一朗(キラ・ヤマト)、田中理恵(ラクス・クライン)、石田 彰(アスラン・ザラ)、森なな子(カガリ・ユラ・アスハ)、鈴村健一(シン・アスカ)、坂本真綾(ルナマリア・ホーク)、折笠富美子(メイリン・ホーク)、三石琴乃(マリュー・ラミアス)、子安武人(ムウ・ラ・フラガ)、関 智一(イザーク・ジュール)、笹沼 晃(ディアッカ・エルスマン)、桑島法子(アグネス・ギーベンラート)、佐倉綾音(トーヤ・マシマ)、大塚芳忠(アレクセイ・コノエ)、福山 潤(アルバート・ハインライン)、根谷美智子(ヒルダ・ハーケン)、楠 大典(ヘルベルト・フォン・ラインハルト)、諏訪部順一(マーズ・シメオン)
監督:福田己津央
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
脚本:両澤千晶、後藤リウ、福田己津央
キャラクターデザイン:平井久司
メカニカルデザイン:大河原邦男、山根公利、宮武一貴、阿久津潤一、新谷学、禅芝、射尾卓弥、大河広行
メカニカルアニメーションディレクター:重田智
色彩設計:長尾朱美
美術監督:池田繁美、丸山由紀子
CGディレクター:佐藤光裕、櫛田健介、藤江智洋
モニターワークス:田村あず紗、影山慈郎
撮影監督:葛山剛士、豊岡茂紀
編集:野尻由紀子
音響監督:藤野貞義
音楽:佐橋俊彦
製作:バンダイナムコフィルムワークス
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹
©創通・サンライズ

関連記事