『おっさんずラブ』なぜ私たちは牧に感情移入してしまうのか 林遣都が見せる心の揺れ動き

 今作では、さらにプラスで「誰かと家族になるとはどういうことか」という難しい課題に登場人物の一人ひとりが直面している。そこに不可欠なのが、コミカルな芝居もシリアスな芝居も巧みにこなすキャストたちの存在だ。中でも、林のふとした演技に目を奪われる瞬間が多い。結婚式はしたくないという牧の思いを春田が尊重してくれた時や、うっとおしく感じていた黒澤が自分たちのことを本気で心配してくれるのが分かった時。牧がそれに対して何を思ったのかは、台詞はなくとも林の眼差しや仕草から十分に伝わってくる。この、いわば気持ちが変化する瞬間というのは最もその人の人間性が現れる場面だ。どんな作品でも、林はそこを繊細に演じてくれるからキャラクターに奥行きが生まれる。ちゃんと“生きている”人間に見える。だからこそ、私たちは林の演じるキャラクターに感情移入してしまうし、牧が春田に見せるちょっといたずらっぽい笑顔も守りたくなってしまうのだろう。第4話で、牧が黒澤の身体を支えた時に「こんなに小さかったっけ」と感じたことを春田に話す場面も印象的だった。

 黒澤は春田にとって、親のような存在。だから、血の繋がりがあるわけでも、一緒に暮らしているわけでもないが、牧にとっても黒澤は家族のような存在になりつつあるのではないだろうか。少なくとも「この人といつまで喧嘩したりとかできるのかなぁって思ったりしたら、なんか……切なくなって」と語る牧のぎこちない仕草から、不器用にも黒澤のこと大事に思っていることが伝わってきた。そうした林の演技でリアルに伝わってくる牧の感情を通して、引き続き「家族になるとはどういうことか」について真剣に考えていきたい。

■放送情報
『おっさんずラブ-リターンズ-』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~0:15放送
出演:田中圭、吉田鋼太郎、林遣都、内田理央、眞島秀和、大塚寧々、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、井浦新、三浦翔平ほか
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)
監督:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
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