『不適切にもほどがある!』が面白すぎるにもほどがある! 阿部サダヲ×宮藤官九郎の問い
市郎の不適切すぎる言動が現代においては浮きまくり、これが私たちから不謹慎な笑いを引き出すのが本作の魅力のひとつだ。彼の言動はあまりにも振り切れていて、個人の自由よりもコンプライアンスが重んじられるこの時代では、むしろ痛快に映るというもの。多くの人がハラスメントの加害者になってしまうことに怯えながらいまを生きているのだから。
むろん、いかなるハラスメント行為も言語道断。許してはならない。けれどもコンプライアンスを意識するあまりに身動きが取れなくなり、息苦しさをおぼえている人がいるのも事実だろう。“多様性の時代”だというのに、これだと思考が凝り固まってしまう。そんな現代人である私たちに、阿部サダヲと宮藤官九郎のゴールデンコンビがある種の“問い”を投げかけるのが本作なのだ。
宮藤が脚本を手がけた『舞妓Haaaan!!!』(2007年)、『なくもんか』(2009年)、『謝罪の王様』(2013年)という3本の映画で阿部は主演を務めているし、TBSドラマでは『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『木更津キャッツアイ』(2002年)、『タイガー&ドラゴン』(2005年)といった伝説的な作品に阿部は参加。名作の盛り上がりに貢献してきた。日本のエンターテインメント界においてこのふたりは、やはりゴールデンコンビなのである。
そもそも阿部と宮藤はともに、松尾スズキが率いる劇団「大人計画」のメンバーである。「大人計画」の持ち味といえば、エキセントリックな設定にナンセンスな笑い。そしてこれを怪演で体現してみせる個性的な俳優陣の存在も大きい。それこそこの劇団は、『不適切にもほどがある!』の市郎が生きる昭和の末期に誕生した。いまだに上演作品の作風は過激だったりするが、時代の変化に合わせて価値観をアップデートしている印象は確実に受ける。これが宮藤の手がけるドラマにも反映されるのは当然だというものだろう。
『不適切にもほどがある!』の第1話の終盤にはミュージカルシーンが登場し、多くの視聴者を唖然とさせた。あまりにもナンセンス。しかし、この歌の内容は“対話の重要性”を訴えるものだった。繰り返されるのは「話し合いましょう」という言葉。もしもこれが普通に用いられていたならば、暑苦しく説教くさいものになっていたかもしれない。セリフではなくリリックだからこそ、この切実なメッセージは私たちに優しく届くのだ。やっぱり、面白すぎるにもほどがある!
■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
第1話ゲスト: 木下晴香、咲妃みゆ、菅原永二
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
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