『さよならマエストロ』嵐を呼ぶ第3楽章 芦田愛菜演じる響と音楽の運命的な絆

 市民オーケストラならではの設定が盛り込まれた第3楽章は、登場人物がそれぞれの秘密を知りはじめるきっかけを含んでいた。海は天音(當真あみ)と顔なじみになり、俊平が指揮を教えていると知る。蓮は天才少女として名をはせた響の存在を認識し、大輝も響の並外れた技量を目の当たりにする。突然降り出した雨に、とっさに譜面台を片付けようとした志帆の横顔を俊平の視線はとらえた。

 嵐の到来を思わせる「田園」の第4楽章のように、第3楽章の終盤では次章以降の展開に向けて布石が打たれた。俊平に対する響の「あなたの尺度で私が幸せかどうか決めつけないで」は親子の決定的な断絶を意味するが、一方で離れようとしても離れることができない響と音楽の絆も描いていた。

 クラシック楽曲をモチーフにした『さよならマエストロ』は、名曲の力を借りながら作品のテーマと連動した心情描写やストーリーの抑揚の付け方が巧みで、無理やり見どころを強調しなくても観る側を自然に引き込む魅力にあふれている。一見すると穏やかな田園風景が嵐を運んでくるように、仔細に張り巡らされた相関図は波乱の契機をはらんでいる。その最たるものは別れの言葉を冠した本作のタイトルで、物語がどんな結末をたどるか最終楽章まで目が離せない。

■放送情報
日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:西島秀俊、芦田愛菜、宮沢氷魚、新木優子、當真あみ、佐藤緋美、久間田琳加、大西利空、石田ゆり子、淵上泰史、津田寛治、満島真之介、玉山鉄二、西田敏行
脚本:大島里美
音楽:菅野祐悟
主題歌:アイナ・ジ・エンド「宝者」(avex trax)
撮影監督:神田創
音楽監修:広上淳一(東京音楽大学)
全面協力:東京音楽大学
企画プロデュース:東仲恵吾
プロデュース:益田千愛
演出:坪井敏雄、富田和成、石井康晴
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/sayonaramaestro_tbs/

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