『ブギウギ』笠置シヅ子もそうだった? スズ子がひたすら“純粋”な人物として描かれる意義

 やっぱりロケは良い。スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)が箱根の芦ノ湖で一泊する模様が描かれたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第17週。

 

 いままでずっと自宅で隠れるように過ごしていたふたり。はっきり書かれてはいないが、人気歌手のスズ子が大手興業会社の御曹司で9歳も年下の男性と同棲していたら、まわりの目も気になるであろう。きっと目立たないようにひっそり暮らしていたに違いない。

 箱根の芦ノ湖は愛助の思い出の地であり、お正月は駅伝を観て過ごしたとか。病が再発し、大阪で療養することになり、その移動の途中、スズ子と箱根にいきたいと愛助のたっての希望で、一泊旅行が実現した。

 湖畔を散策し、写真を撮り合うふたり。とても楽しそうだった。やはりロケだと自然ないい表情が出る。というのは、風景が作り物ではないからだ。風や光や草や水の匂いを感じた表情にウソはない。いつでもロケだったらいいのに、と思うがそうはいかないのがドラマの世界。そして、今回は、スズ子と愛助の最高の思い出となるであろう旅行ということで、唯一のロケを敢行したということなのかなと思った。

 すてきな風景を見ながら、愛助はいつか子供ができたら3人で来たいと夢を語る。そのとき、スズ子が何かを言いたそうにしていた。旅行から帰って病院に行くと妊娠3カ月であることが判明した。

 生まれてくる子のためにも、トミ(小雪)に結婚を認めてもらいたい。こう見えて、スズ子は複雑な出生の事情を持っている。養父母に愛情たっぷり注いでもらったとはいえ、やっぱり望まれて生まれてきたわけではないことが彼女のなかに影を落としているのだろう。子供にとってなんの問題もない環境で生まれてきてほしいと願うのだろう。

 第17週は、トミの母の気持ちと、母になりたてのスズ子の気持ち。ふたりの母ごころが描かれた。どちらもまず子供が心配なのだ。トミは、愛助たちが順序を踏まずに結婚前に子供を作ったことに怒髪天。まあでも男女が同棲していたら、そうなってもおかしくない気もしないではなく……。そんなに心配だったら、ふたりを引き離すことができたはずで、トミは会社の経営が忙しいのか、愛助愛助、言うわりに彼を自分の目の届く範囲に置けていないのである。

 愛助が幼い頃、山下(近藤芳正)に面倒を見てもらったら愛助が道楽を覚えてしまい、トミは山下の首を切っている。スズ子のこともあくまで世話係と思っていたのだろうか。そういう意味ではトミのキャラクターはいろいろ抜けがあり、ツッコミどころ満載で、おもしろい。坂口(黒田有)、山下、矢崎(三浦誠己)と一癖も二癖もある人物たちをとりまとめているということも、それだけトミは包容力があるのだろう。

 余談ではあるが、第81話に登場した看護師・東役の友近も吉本興業所属で、三浦も元吉本。黒田も吉本、と、村山興業のモデルと思われる吉本興業の芸人が続々登場しているところが面白さでもある。

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