『王様戦隊キングオージャー』に“モブ”は存在しない 小さな結束が集まってより強い結束に

 だが、本作はこれとはまた別の結束も大切に描いているのが特徴的だ。ここにはメインとなるヒーローそれぞれが「一国の王である」ということが大きく関わってくる。これは簡単に言えば、キングオージャーではないレンジャーが、別のところでは中心となる“赤レンジャー”であることを意味する。国を守る王となるためや国民から頼られる王であり続けるためには、王と側近との結束や王と国民との結束が必要になる。だからこそ、各国の側近や国民の心情が丁寧に描写され、彼らが物語を動かす回も生まれてくるのである。

 また、ヒーローとロボットの結束も描かれている。“戦隊モノ”には通常、敵との地上での戦いが一段落すると敵が巨大化し、ヒーロー側がロボットを使って応戦するロボ戦がある。本作はそのロボ戦がメインとなっている。なんなら最弱の敵である戦闘員・サナギムでさえも巨大化する。ギラはロボットであるシュゴットの言葉を理解できるのだが、そのほかのメンバーは分からない。それでもシュゴットたちと協力するために心を通わせようとするのだ。

 それは、両親を殺した毒を持っているかもしれないゴッドスコーピオンに対峙したヒメノ(村上愛花)が、ゴッドスコーピオンのゴッドカブトへの恋心を見抜いたことからもよく伝わってくる。これをきっかけにヒメノがゴッドスコーピオンを親しげに「すこピ」と呼んでいるのもかわいらしい。

 小さな結束はたくさん集まることでより強い結束になる。これまでスポットが当たってこなかったものや人にも光を当てた本作は、キングオージャーの一員としてチキューを守る一人ひとりに、支えてくれる人たちやロボがいて、その全員が大切な存在であり、その他大勢の「モブ」など存在しないのだということを教えてくれているのではないだろうか。そしてそれが全体の大きな魅力へと繋がっている。

 物語はいよいよ最終盤。最後までキングオージャーたちの活躍を見守っていきたい。

■放送情報
『王様戦隊キングオージャ―』
テレビ朝日系にて、毎週日曜9:30~10:00放送
プロデューサー:大川武宏(テレビ朝日)、大森敬仁(東映)望月卓(東映)、湊陽祐(東映)、矢田晃一(東映エージエンシー)
原作:八手三郎
脚本:高野水登
監督:上堀内佳寿也
アクション監督:渡辺淳
特撮監督:佛田洋(特撮研究所)
©テレビ朝日・東映AG・東映

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