「カッコいい」以外の価値も反映

　近年の強い主人公たちにおける人気の理由としてもう一つ考えられるのは、「カッコいい」以外の価値観も柔軟に取り入れていることだろう。

　1月から放送されている冬クールのアニメ『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』『転生したら剣でした』（再放送）では、幼女や剣に転生した主人公の活躍劇が描かれている。

　例えば、『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』の主人公が持つ強さは「動物に異様に好かれる」こと。その動物たちによって力を授けられることになるため結局は戦闘能力も高いのだが、ストレートな強さとは趣が異なっているのだ。

　こうした「相手を倒せる」こと以外に主軸を置いた能力に優れた主人公は、近年のラノベ発アニメにおいて特に多くみられる。それはやはり、最近の視聴者の中で「相手を倒せるカッコいいヒーロー」だけが憧れの存在ではないとの考えが浸透してきたからだろう。

　現在はSNSで他人の生活を垣間見られる環境が整い、人を評価する際にはゆるさや実用性（アドバイスの役立ち度）といったさまざまな尺度の物差しが使われるようになっている。

　ラノベ作品の主人公たちは、時代に合わせた強さを柔軟に提供することで多くのユーザーに好かれているのではないだろうか。

　視聴者の希望を汲み取り、かつて私たちが観ていた戦隊モノのような活躍や、無意識に重んじている「カッコいい」以外の価値観で人々を楽しませる主人公。2024年放送のラノベ発アニメはもちろんのこと、今後登場するラノベ作品の主人公の個性にも着目したい。