『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』なぜティム・バートン版と世界観が違うのか?
一方で、ティム・バートン版の『チャーリーとチョコレート工場』と1971年版『夢のチョコレート工場』も、共にロアルド・ダールの児童書『チョコレート工場の秘密』を原作としながらも、ウォンカの物語を全く異なる解釈で表現している。つまりは、それぞれの作品が原作の魅力を独自の方法で捉え物語を拡張していることにより、観客は同じ“ウォンカ”を多様な形で楽しむことができるのだ。新旧のウォンカ、そしてそれぞれの魅力を比較し楽しむことは、ウォンカを取り巻く物語の多面性をより深く理解するきっかけにもなる。
例えば『チャーリーとチョコレート工場』では、ウォンカの父親は描かれているものの、母親についての描写は見当たらない。ウォンカのキャラクターは歯医者である父親との確執を通して深く掘り下げられている。しかし『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』で描かれているウォンカは、父親がいない環境で育ち、母親からの愛を真っ直ぐに受けて育った青年だ。この映画ごとの視点の変化は、中心にある「家族」というテーマを異なる角度から映し出し、両作品の対比を際立たせている。
また『チャーリーとチョコレート工場』では、ソフト版では藤原啓治が、日本テレビ系『金曜ロードショー』版では宮野真守が日本語吹き替えを担当した。これに対し、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』では、花村想太が吹き替えを務め、歌唱シーンも担当している。ジーン・ワイルダーが歌う「Pure Imagination」を引き継ぐように、4オクターブの高音域を持つヴォーカリストと呼ばれる花村が、主題歌「ピュア・イマジネーション」を歌う場面は、本作を吹き替えで観る最大の醍醐味とも言えるに違いない。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、大人に響くようなシニカルな面だけでなく、子供たちも純粋に楽しめる夢溢れる世界を巧みに描く。このバランスのとれた表現は、さまざまな年代の観客に愛される理由の一つだ。新しいウォンカの誕生をどう見るのか。チョコレート工場の“これまで”と照らし合わせてみても、面白いだろう。
■公開情報
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
全国公開中
出演:ティモシー・シャラメ、ヒュー・グラント、オリヴィア・コールマン、サリー・ホーキンス、ローワン・アトキンソン
監督・脚本:ポール・キング
製作:デヴィッド・ヘイマン
原案:ロアルド・ダール
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:wonka-chocolate.jp
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