『劇場版 SPY×FAMILY』はアニメを超えた究極の完成度 劇場版ならではの“お楽しみ”も

 “完璧な劇場版”というものを観たければ、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』を観に行こう。原作漫画から読んできた人も、TVアニメを楽しんでいる人も、これが初『SPY×FAMILY』だという人も、「夜帷」の大ファンだという人も、楽しめて満足して嬉しい気持ちで劇場を出て、そしてもう1度観たいとチケットカウンターに並ぶことになるはずだから。

 世界各国が諜報戦を繰り広げている時代。悲惨な戦争をもう絶対に起こしたくないと心に誓っている西国(ウェスタリア)の諜報員「黄昏」は、東国(オスタニア)に潜入し、子どもを介して要人への接触を試みるため家族を作る。それがフォージャー家。ところが、孤児院から引き取った少女は実は超能力者で人の心を読むことができて、そして妻に迎えた女性は「いばら姫」のコードネームを持つ凄腕の殺し屋だった。

 それぞれに秘密を抱えた3人が、表向きは優しくて有能な父ロイドと、子育てに熱心だがおっちょこちょいなところがある母ヨル、元気で好奇心旺盛な娘アーニャという仮初めの家族を作って暮らしていく中で、それぞれの仕事や能力が関わる事件に巻き込まれていく。だからといって3人とも絶対に自分の秘密を明かすことができない難しい状況で、どうやってピンチを突破していくのか?

 これが、『SPY×FAMILY』をいわゆるシチュエーションコメディとして成り立たせ、漫画の読者やTVアニメの視聴者を面白がらせているポイントだろう。『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』にはそのポイントをストーリーの中にしっかりと取り込み、いつものハラハラをいつも以上のスケール感で観せてくれる。そこがまず完璧だ。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』 最新予告映像《主題歌 Official髭男dism 「SOULSOUP」》【12月22日(金)公開】

 予告編で明らかになっているように、劇場版はフォージャー家が未来予知の能力を持った犬のボンドもいっしょに家族旅行に出かけるというストーリーとなっている。旅行の目的は、アーニャが通うイーデン校で行われる調理実習で、アーニャが好成績を収めるために必要なお菓子の作り方を学ぶこと。ところが、旅行の途中でアーニャは東国の軍部が西国から盗み出したマイクロフィルムが入ったチョコレートを食べてしまう。

 そして起こったアーニャの危機に、ロイドはロイドで立ち向かいヨルもヨルでアーニャを助けにはせ参じる。優秀な諜報員と凄腕の殺し屋が組めば向かうところに敵なしの布陣だが、お互い絶対に正体を明かせないという制約があり、共闘は不可能という状況をどうやって作るのか。そうした難題に劇場版はしっかりと応え、ロイドに潜入から変装から格闘といった見せ場を作り、ヨルにも超絶的な身体能力を持った殺し屋ならではの活躍をさせる。 

 お約束とはいえ、そうした状況へと持っていくためには展開上の工夫が必要。そこでなるほどそう来たかと納得させつつ、いやいやそれはさすがにバレるんじゃないかと呆れさせながらも、お互いが今の関係を壊したくないからとごまかして受け流すところまで含めて、『SPY×FAMILY』のフォーマットをしっかりと踏襲している。だから安心して観ていられる。これも劇場版を完璧なものとしている理由のひとつだ。

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