ジョナサン・メジャース有罪評決、マーベル解雇へ 映像&音声証拠の詳細を時系列で解説

 ついに評決が下された。マーベル映画への出演で知られる俳優ジョナサン・メジャースが12月18日(現地時間)第3級暴行罪とハラスメント罪で有罪評決となり、その結果マーベルが彼を解雇する旨を発表した。

 メジャースの一件は3月25日に起きた彼の逮捕から始まり、多くの証言と映像、裁判の延期など問題を抱えてきた。詳しいことの始まりと4月末時点の情報はこちらの記事にて解説しているので、本稿ではその後の進展を振り返りながら今回の評決結果を中心に言及したいと思う。

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評決内容の詳細

 簡単に今回の裁判の内容をまとめると、メジャースは3月25日に当時付き合っていた英国出身のダンサーであるグレイス・ジャバリに対する暴行容疑でニューヨーク市警に逮捕され、4件の罪で起訴された。注目すべきはその内訳なのだが、それぞれの罪状を原語で確認すると何が起きているのかわかりやすい。先に述べた有罪となった2件は「reckless assault in the third degree(故意ではない第3級暴行罪)」と「harassment in second-degree(第2級ハラスメント罪)」、無罪になったのが「intentional assault in the third degree(故意の第3級暴行罪)」と「aggravated harassment in second degree(第2級の加重ハラスメント)」であり、メジャースの行動が “故意か、故意ではなかったか”が争点なのだ。

 陪審裁判として下されたこの評決結果は、6人の陪審員が「メジャーズが元恋人を傷つけてしまった(暴行をした)」とは考えるが、「故意に暴行を加えたわけではない」と信じ、「車内で加重なハラスメントは行なっていない」と考えるが、世に出た証拠映像に映っていたように「車外に出た彼女を車内に押し戻すなどの嫌がらせ」は行ったと信じていることを意味する。

 この評決に伴う判決日は2024年2月6日と発表されている。初犯であることと有罪になったのが軽犯罪であることから執行猶予の余地もあるが、最長1年間の禁固刑が言い渡される可能性もゼロではない。

驚くべき数々の映像証拠

 さて、この評決に世間は様々な反応をしているが、忘れてはいけないのが本件には様々な紆余曲折があったことである。発端はイベント帰りの車内でジャバリがメジャースの携帯に違う女性から「今、あなたにキスしたい」という内容のメッセージが届いているのを見かけたこと。そして彼女は携帯を奪い、メジャースはそれを奪い返す際に(ジャバリの証言によれば)“非常に攻撃的”だったそうだ。揉み合いの結果、(ジャバリの主張では)彼女の指が骨折し、殴られたことで耳裏に裂け傷ができて血が流れたと言われている。

 しかし、停止しているSUVからメジャースとジャバリが揉めながら降り、歩道に入った途端にメジャースが自分を掴む彼女の手を振り払って、ジャバリから離れようとしている様子、そしてその後彼女にしばらくの間走りながら追いかけられている様子が市街の防犯カメラの映像で明らかになった。メジャースの弁護人であるプリヤ・チャウドリーは彼女の証言を虚偽とし、「SUVから出た時、彼女は一切傷ついていなかった」と主張。本件はこれまでも「ジャバリの嘘」を巡って両者の意見が一致してこなかったが、今回の裁判を通して先に述べた映像のほかに様々な市街監視カメラの映像、クローゼットで倒れていたジャバリのためにメジャースが警察を呼んだ時の映像がここ数カ月間の中で公開されている。

 それらの映像を時系列順に追って解説しよう。3月25日の0時42分、二人は車から降りた。そしてメジャースはジャバリから離れようと走り出し、49分ごろに彼女を巻いた。疲れたのか“髪を手でかき分けながら”後ろを歩くジャバリは50分ごろにソーホーの高級コンドミニアムの建物前で、建物から出てきた男性2名と話を始める。映像は、彼女が彼らに「自分はメジャースの彼女である」「喧嘩をして車内に携帯と財布を置いてきてしまった」など話す様子や、男の一人が「No way!(マジかよ!)」と叫ぶ音声も拾っている(彼らの会話の詳細が聞こえるくらいで、筆者は監視カメラの発達に驚きを隠せない)。

 その後、建物から出てきた男性の仲間でもある女性が(彼らはどうやら大人数でホームパーティーをしていたようだ)ジャバリの異変を察し、心配して声をかけた。「ウーバーを呼んであげる」など泣く彼女を放って置けないと彼らが親身になっている間、彼女は泣きながら“重いコートを怪我した側の手で持っていたり”、“何の問題もなさそうにロングヘアをお団子に何度も結び直したり”している。男性から借りた携帯を普通にスクロールする様子も。そうこうしていると、54分頃に先ほど逃げた方面からメジャースが歩いてくる。彼に話しかける彼女を無視するように去る彼を、彼女が助けを求めた男性が捕まえに行こうとして仲間に引き止められる様子まで収められている。チャウドリー弁護士は、弁護側にとって重要なこの証拠映像を検察側に“隠された”と主張し、そのリーク映像をBUSINESS INSIDER誌が独占入手していた。ちなみに、この時ジャバリと話をしたうちの2名が彼女が傷ついているように見えなかったと裁判で証言している。

 その後、ジャバリは先ほどの男女3名とクラブに行き、踊ったりシャンパンを頼んだりとかなりの量の酒を飲みながら遊んでいた様子が監視カメラで確認されている。午前3時23分に彼女はメジャースのアパートに到着し、午前11時過ぎに帰宅したメジャースは下半身が裸の彼女がウォーキングクローゼットで倒れているのを確認し、911に連絡をしたのだ。その際の音声映像も公開されている。

メジャースが「俺はモンスターだ」と送ったメッセージと音声証拠

 一方でDVの容疑をかけられていたメジャースについての証拠もいくつか出てきている。12月13日にPEOPLE誌が入手した、2022年9月時点のメジャースとジャバリのメッセージによると、“頭の痛み”を訴え病院に行きたがっているジャバリに対して「君が何の考えも持たずに病院に行くのであれば恐ろしい。彼らは質問をするだろう。そうすれば彼らは調査を始めて、僕たちの関係が危うくなる。君が嘘をついても彼らは何かを怪しむだろう」と送信。その返信でジャバリが「医者には自分で頭を打ったと言う。もう1日様子を見るけど、寝れないから強い痛み止めが欲しい、ただそれだけなの。どうしてあなたと一緒にいたがる私が、彼らに本当のことを言うと思うの?」と訴えた。

 この会話から推測されるのは、彼女がメジャースに頭を殴られたことを暗に示していること。加えてその後のメジャースの返信では何度も「君から愛されていない」「自殺を考えている」「俺はモンスターだ」など、自死を仄めかして病院に行かせないように脅していると捉えられる文言が書かれていた。

 そして12月14日に証拠として公開された音源は、同じく2022年9月に二人が喧嘩した時のもの。ジャバリが録音したと思われる音声の中では、泣いている彼女に“もっと俺の彼女として意識を高めてほしい”と説教するメジャースの声が入っていた。

「君の友達は僕がどういう仕事をしているのかわかっているのか。(中略)コレッタ・スコット・キングは(夫をサポートする)マインドセットをしっかり持っている。コレッタが誰かわかる? マーティン・ルーサー・キングの奥さんだよ。バラク・オバマの奥さん、ミシェル・オバマもそうだ」

「ごめんなさい、私が出かけなければよかった」

「待って待って、君のために説明させてよ。もう言うよ、僕は確かに怒りやすいけど良い人間だ。素晴らしい男だ。素晴らしいことをただ自分のためだけじゃなく、同じ文化圏の人のために、世界のためにやっている。そういう立場に僕はいるんだ。それが現実だ。(中略)そんな僕をサポートしてくれて、僕もサポートする相手は素晴らしい女性でなければいけない。僕が彼女のために何かをするように、彼女も自己犠牲を払う必要がある。2日前の君は、それをしなかった。そのせいで計画から外れてしまった。そして計画が全てだ」

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