『ブギウギ』におでん屋・坂田聡は必要不可欠だ! その“味”のある演技パフォーマンス

 伝蔵がはじめて登場した際、またもクセの強いキャラクターが登場したと誰もが思ったことだろう。渋面を浮かべながらスズ子に接する彼は、東京にやってきたばかりの彼女にとって最悪だった。いまの時代でも「東京の人は冷たい」などと言われたりするものだが、それはこれだけ多くの人々が生活していくうえで、お互いにバリアを張り合っているからだと思う。ちゃんと言葉を交わしてみれば、理解し合えることだってある。伝蔵という存在はこのある種の「東京」を体現しているものだ。演じる坂田は表情だけでなく、セリフを口にする際の声の質感などにもこれを滲ませていた。趣里がいつもとは少し違うスズ子像を作り出せているのは、それを受ける坂田のパフォーマンスの賜物でもあるだろう。

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 そんな坂田といえば、本作『ブギウギ』の脚本を担当する足立紳作品の常連俳優でもある。足立が脚本を手がけた『百円の恋』(2014年)や『きばいやんせ!私』(2019年)、『嘘八百 京町ロワイヤル』(2020年)や『アンダードッグ』(2020年)だけでなく、足立の監督作である『14の夜』(2014年)と『喜劇 愛妻物語』(2020年)にも出演。いずれも出番の多寡にかかわらず、クセ(「味」とも言い換えられる)のある演技で作品を盛り上げてきた。とくに『百円の恋』は公開当時に非常に話題となった作品だということもあり、劇中で坂田が演じたあの卑しい性格のコンビニ店員役を鮮明に覚えているかたが多いのではないだろうか。

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)にて、坂田は「物語の本筋に関わることはありませんが、屋台にやってくるヒロイン・スズ子や登場人物たちを、時にはぶっきらぼうに、時には優しく、おでんの湯気越しに見つめています。まさか自分が朝ドラに出られるとは夢のようです」などと述べているが、彼にしか担うことのできない役割を、いま確実にまっとうしているところだろう。伝蔵の存在をとおして、私たちはスズ子の本音を聞けたりできるのだから。坂田聡の出す「味」が、本作には必要不可欠なのだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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