『トキコイ』怒涛の“伏線回収”=“辻褄合わせ” これまでの“不可思議な事象”の謎が明らかに

 第1話のクライマックスで描かれた公園のシーン。廻(吉岡里帆)と翔(永山瑛太)が公園のベンチで話をし、廻が立ち去ろうとした瞬間に翔の声で呼ぶ声がする。「え?」と振り返った廻に、声の主であるはずの翔は何が起きたのかわからずに周囲を見回す。『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ・フジテレビ系)には他のエピソードでもこうした、ちょっと不可思議な事象がたびたび描かれてきた。12月12日に放送された第10話では、廻によってそれらの謎が一気に片付けられていく。一般的な言葉を用いれば“伏線回収”、もっとこのドラマらしいワードを使えば、“辻褄合わせ”のエピソードというわけだ。

 未来の情報を過去人――それも廻の直属の上司に売って、推し活の資金を工面していた八丁堀(シソンヌ・じろう)。彼が隊長の和井内(石田剛太)から詰められているタイミングで、廻のもとに広瀬(西垣匠)から電話が掛かってくる。発売を目前に控えた“ゆずこしょうキャラメル”が、ゆずの価格高騰によってかぼすで代用されることが決まったという。それもまた、過去の自然食品を未来に密輸する時空犯罪団ルーパーイーツに八丁堀が手を貸したがために起きたこと。しかしそこで廻は、以前間違って“かぼすこしょうキャラメル”のデザイン案が届いたことを思い出し、1カ月前へとひとりで向かうのである。

 この“かぼすこしょうキャラメル”のくだりが登場したのは第4話。廻と翔が交際することになり、浅草に初デートへ出掛けた次のシーン。ここでは廻が恋に浮かれていたがために、仕事で思いも寄らぬミスをしてしまった、という意味合いで描かれていた。それが今回、“かぼす”と“ゆず”のありえない聞き間違いには理由があったのだとはっきりとわかる。廻が過去(第4話よりも前の時点)に遡って、あらかじめ“かぼすこしょうキャラメル”のデザインを発注する。それによって、広瀬の電話では無理なことだと言われていた当初の発売日を変えずに商品を変更することが叶うのであろう(とりあえずはその顛末までは描写されないが)。

 これを機に廻はこれまでのあらゆる辻褄合わせを進めていく。まずは第1話に登場した路上ミュージシャンの綿谷ジュン(吉澤嘉代子)にCD作りを持ちかける。これによって彼女が恋に落ち(その後記憶を剥がされた)23世紀人の横井大知(泉澤祐希)が彼女のCDを見つける同話のエピローグへとつながる。また、第2話で未来から駆け落ちしてきた恋人たちの問題を解決する“タイムラグ製法”を思い出すように、不自然な登場をしたゆずも然り。第5話で30年後からやってきた男をレストランから逃がしたのも廻であった。

 さらに第7話で天野(伊藤万理華)が廻と翔を追いかけて1983年にやってくるよう書き置きを残し、そもそもの廻と翔の出会いが発生するように広瀬にタイムボードを貸し、梓(田中真琴)に彼を迎えに行かせる。これらすべては、その時点よりも未来からやってきた“2周目”の廻の仕業。それもこれも翔との恋を成就させるためのものであるが、あえなく2人は監査に捕まり記憶を剥がされてしまう。機械の操作をしているのが天野だからもしかして……という淡い期待を抱きたくなるが、3周目”で恋の急展開が待ち受けるというフィナーレもなかなかロマンチックでありなのではないだろうか。

■放送情報
火ドラ★イレブン『時をかけるな、恋人たち』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜23:00〜放送
出演:吉岡里帆、永山瑛太、伊藤万理華、西垣匠、田中真琴、夏子、石田剛太、じろう(シソンヌ)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
監督:山岸聖太、山口淳太
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
音楽:王舟
主題歌:Chilli Beans.「I like you」(A.S.A.B)
オープニング曲:PEOPLE 1「ドキドキする」(Sony Music Labels)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:www.ktv.jp/tokikake/

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