水上恒司、変化した役者としての覚悟 「自分の言葉で作品のメッセージを伝えていけたら」
『ブギウギ』(NHK総合)第11週より、ついに水上恒司演じる村山愛助が登場となる。愛助は日本随一の演芸会社・村山興業の御曹司で、スズ子(趣里)の大ファン。スズ子にとっても、“最愛の人”となっていく重要な役柄だ。そんな愛助を、朝ドラ初出演となる水上はどんな思いで演じたのか。「何の疑問も持たず、愛せた」というスズ子を演じた趣里との共演についても語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
役作りへの不安を拭い去ってくれた「ラッパと娘」
――まずは、自身の役どころについて簡単に聞かせてください。
水上恒司(以下、水上):スズ子が最初で最後に愛した男が、僕の演じる村山愛助です。スズ子はいろんな人の支えや後押しを受けてスターとして駆け上がり、母親として娘を育て上げてきます。そんなスズ子の人生に、特に大きな影響を及ぼしていく重要な役どころとなっています。
――重要な役どころとのことですが、具体的に水上さんは愛助というキャラクターをどのように捉えているのでしょうか?
水上:戦前戦後という今より遥かに男性が優位な世の中で、愛助はスズ子のことを立てていくんですね。なので、多くの人がイメージする当時の男性像とは真逆の男性を想像して演じました。ある種、時代に逆行するスズ子と愛助の姿を、昔ほどではないですけど、まだまだ男女格差のある現代に届けることに意味があると思っていますし、社会が目指していくべき男女の形がそこにあるんじゃないかと感じています。
――そんな愛助を演じる上で心がけていることはありますか?
水上:スズ子のことを一番に考えることです。愛助を語る上でスズ子は切っても切り離せない存在なので、澤井梨丘ちゃんが演じていた少女時代のスズ子も念頭に入れながら、「スズ子に刺さるのはどんな男性なんだろう」「どういう愛助でいたらスズ子は楽しく生きていけるのかな」ということを常に考えながら演じています。
――愛助は御曹司という役柄ですが、そこに関して意識されたことは?
水上:御曹司に関しての役づくりは特にしてないです。今回はあくまでもスズ子のお話なので、周りの人間はスズ子にとっての“名脇役”になっていかないといけないと僕は思っているんです。だから、愛助という人間を主軸に置いた役づくりはしていなくて。のちに村山興業の御曹司であるがゆえの愛助の葛藤も描かれていきますが、そこに関しては母・トミ役の小雪さんや村山興業の方々とのセッションで作っていけたらいいなと思っています。
――愛助はスズ子の大ファンということで、水上さんが実際に趣里さんのパフォーマンスを観たときの感想を教えてください。
水上:クランクインする前に趣里さんが「ラッパと娘」を歌っている音源をいただいたんですが、その時に「役作りは全く心配ないな」と思いました。趣里さんの歌声を聴いて、愛助を演じる役者として頭で考えずとも、純粋にスズ子のことを好きになれると率直に思えたんです。その上で実際にステージに立つスズ子のことを観たんですが、やっぱり最高でしたね。音楽とドラマがうまく噛み合うと、こんなに予想もできないほどのエネルギーが生み出されるのかと。『ブギウギ』は本当に面白い作品になると、その時に改めて確信しました。
――ステージから降りたスズ子のことも、愛助は一人の女性として愛していくわけですが、水上さんから見たスズ子の魅力は?
水上:ドラマ全体を通して言えることですが、スズ子には暗いところがあまりないんです。僕自身、辛いことや苦しいこともあるけど、「ああいうこともあったな」と後から前向きに自分の人生を捉えていけたら楽しく生きていけるんじゃないかなと思っているんですが、そういう人生を喜劇として捉えていく視点の重要性をスズ子に教えてもらっています。
――愛助は関西弁を使いますが、イントネーションで苦労したことはありましたか?
水上:僕自身、西日本に住んでいたということもありますし、関西弁ってテレビでもお笑い芸人の方が使っていて馴染みのある言葉なので、台本をいただいた時点では意外といけるんじゃないかなと思ってたんです。だけど、現場に入ったら方言指導の方に「全然ちゃうで」と言われてしまって(笑)。僕は九州出身でそっちの訛りもあるせいか、「あんた七色の方言使うな」とも言われました。撮影もそろそろ終盤に差しかかってきましたけど、未だに悪戦苦闘しています。
――撮影中に大阪らしさを感じる場面は?
水上:大阪のスタッフの方々が揃っているので、やっぱり他の現場とは違う空気感はあります。やりとり一つにしても何か試されている気がします(笑)。僕もツッコミを入れたりしますが、打率は1割8分くらい。戦力外になるくらいですね。来シーズンはないかも(笑)。そんなことを含め、一瞬たりとも油断ができない瞬発力を要する刺激的な現場でしたね。