GACKT&杏、海外在住の2人が考える真の“郷土愛” 日本に「帰ってきた」と感じる瞬間は?
GACKT「ダメな部分も受け入れるのが本当の郷土愛」
ーー『翔んで埼玉』にはローカルネタや地方ディスがたくさんありますが、愛あっての部分も大きいと思います。こういう形の郷土愛というものを、お2人はどう考えていますか。
GACKT:一概に全て肯定するのは郷土愛じゃないんじゃないですか? ダメな部分もいい部分も両方受け入れるのが本当の郷土愛だと思うんです。自分たちがダメな部分も受け入れているからこそ、自虐もできる。そこにはアンビバレントな感覚がありますよ。他県の人から言われるのは嫌だけど、自分たちで言うのはOKという。ボクは、7歳まで沖縄で暮らして、それ以降はいろいろなところを転々としているんです。10代の頃に一度沖縄に戻ったけど、やっぱり沖縄にもいい部分と悪い部分があるなと思うし。
ーーそうですね。そういう郷土愛がどこから生まれるのか、この作品は案外そういうところは外さずに描いています。
GACKT:愛があるゆえに衝突が生じるというか。難しいですよ。
杏:埼玉や滋賀の方から、「ディスられてもいいので取り上げてもらって嬉しい」という声が届いていて、そういう感情も愛ゆえなのかなと思いました。私は東京出身なので、お盆になっても帰る場所がなく、故郷みたいな場所にすごく憧れていたこともあったんです。でも、パリに住むようになってからは、東京に帰ってくると「東京っていいな、ご飯おいしいな」と感動するようになったので、帰る場所があるっていいなぁと思えるようになりました。
ーーやっぱり東京に戻ってくると「地元に帰ってきた」という感覚になるんですね。
杏:なりますね。「言葉わかるわ〜」とか思いますし(笑)。コンビニって便利だなとか、宅配便がいつ届くのかもわかるし。不便な海外もそれはそれで面白いですけど、一度海外で暮らし始めると、その違いが顕著に感じられますね。
ーーGACKTさんも日本に戻ってきたとき、「帰ってきたな」と感じますか?
GACKT:ボクはもうマレーシアに住んで11年になります。2001年からとにかく住みやすい場所を探そうと思って、80カ国・360都市くらいを旅行じゃなく不動産巡りの目的で回りました。それだけ探しても住みやすいなと思えるのは、今のところマレーシアしかないんですよ。だから、東京には20年住んだけど、「帰ってきた」という感覚を持ったことはないです。
ーー20年間ずっとそういう感覚だったんですか?
GACKT:沖縄なら「帰ってきた」と思えるんですけど、東京には「お邪魔している」って感覚です。日本国内あちこちに引っ越したけど、帰ってきた感覚があるのは国内では沖縄だけで、それ以外の場所には「お邪魔している」って感じることのほうが多いです。むしろ今はマレーシアに「帰ってきた」という感覚のほうが強いくらいです。郷土愛って、結局自分の心はどこにあるのかということだと思うんです。それは生まれた場所に限らず、育った場所が故郷だと言う人もいるでしょうし、自分の心のある場所への愛着が郷土愛なんじゃないですか。
注釈
※ 滋賀県の車両のナンバープレートの「滋」の文字の形が「ゲジゲジ」に見えることからきている。
■公開情報
『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』
全国公開中
出演:GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助ほか
原作:『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』魔夜峰央(宝島社)
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
配給:東映
©︎2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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