『いちばんすきな花』紅葉の“不器用さ”がむず痒い “救い”となった4人のマグカップ選び

 学生時代はどこか「みんなと仲良くしましょう」という刷り込みからか、友達は多いほうがいいような気持ちになりがちだ。その結果、自然と友達の多い人=目立つ人と仲良くなっていくほうがいいことのように思えてくる。もれなく紅葉も、目立つ人たちと仲良くなろうと必死になっていった。その選択のほうが“間違っていない“と思い込んで。

 しかし今、紅葉が心を許すことができているのは、「2人組になれなかった1人」を自称しているゆくえ(多部未華子)、夜々(今田美桜)、そして椿(松下洸平)だ。つまり、紅葉にとってもともと居心地のいい人というのは、目立つ人たちよりも、1人になったとしても自分の世界を大切にできる人だったということ。

 そこで、ゆくえが買ってきた4色のマグカップが繋がってくる。もともとは、ゆくえが4人をイメージして、ゆくえ=水色、夜々=紫、椿=赤、そして紅葉=黄色と購入したマグカップ。1人ずつ好きな色を順に取り、被ったらじゃんけんか会議で決めようとしていた。

 このマグカップ選びの光景は、4人の距離が縮まっていることを描いているのと同時に、紅葉の救いのシーンになっているように感じた。奇跡的に夜々のいちばん好きな色は紫だったし、椿も予想通り赤を気に入った。そして最後に紅葉は黄色のマグカップを選んだ。

 それは、余っていたから選んだものじゃない。つまりは、紅葉がこれまで“余った“から声をかけてきたと思った人たちのことも、黄色のマグカップと同じ。本当は、ちゃんと好きで選んだということを、紅葉が気づいてくれていると嬉しい。

 もともと紅葉が「優しいふり」だと思いこんでいるものは、本当の「優しさ」だったし、それはシノミヤにもちゃんと伝わっていた。だから、それを否定するようなことを言われて理解に苦しんだと思う。そして、何より悲しかったはずだ。シノミヤが好きな紅葉を、紅葉自身が「最低なヤツ」と蔑んだことに。

 人は、ときに自分自身のことを一番理解できていないことがある。特に過度な期待を寄せられたり、好きが否定されるような環境にいたりすると、どんどんわからなくなってしまうものだ。だから本当の「友達」とは、そんな見失いそうになる自分自身の良さを気づかせてくれる人のことを言うのかもしれない。

 久しぶりに再会したゆくえと赤田(仲野太賀)のやり取りを見ていてもそう感じた。本当の「友達」はしばらくお休みの期間があっても、まるで昨日ぶりのように話せる。それは、お互いの良さを知り尽くしているのはもちろん、少々喧嘩をしても、気まずい別れをしても、きっとすぐに良さも見つけ合えるはずなのだ。

■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichibansukina_hana/
公式X(旧Twitter):@sukihana_fujitv
公式Instagram:@sukihana_fujitv

関連記事