『プリキュアオールスターズF』に凝縮されたシリーズの魅力 入門編としても最適な一作に

 『映画プリキュアオールスターズF』が9月15日に公開され、大ヒットを記録している。5年ぶりのオールスター映画ということもあり、注目度の高さが窺え、レビューサイトの評価も高い。今回は今作の魅力とともに、『プリキュア』シリーズが描いてきた正義と悪の形について考えていきたい。

 『映画プリキュアオールスターズF』は、2004年より放送開始された『プリキュア』シリーズの20周年を記念し、歴代のプリキュアが集結したオールスター作品だ。現在放送中の『ひろがるスカイ!プリキュア』(ABCテレビ・テレビ朝日系)と、近年放送された『プリキュア』シリーズのキャラクターを中心とした物語とともに、77人の歴代プリキュアが登場し、強大な敵とのバトルが繰り広げられる。監督は長年『プリキュア』シリーズに参加してきた田中裕太、脚本は田中仁が務めている。

『映画プリキュアオールスターズF』ファイナル予告

 オールスター映画の宿命として、多くのキャラクターが登場するために、見せ場を与えようとするほど物語の主軸が生まれづらいという欠点があるが、今作は物語の整理が上手い。73分の上映時間内に収めるために出番の濃淡こそあるものの、特に近年のプリキュアキャラクターの魅力ははっきりと伝わってくる。

 序盤では3、4人のグループが4つに分かれて物語が展開されていく。そこでもキャラクターと登場作品の個性が発揮されている。プリキュアシリーズはバトル作画が話題になりやすいが『トロピカル〜ジュ!プリキュア』のように顔を崩したギャグ表現なども豊富で、コメディとしても優れている。作品ごとによってシリアスとコメディのバランスは若干異なるが、その振れ幅の大きさも楽しめるシリーズの魅力の一端を、73分で味わえるのだ。

 オールスターといわれてもそれほどプリキュアに詳しくない、あるいは小さな子どもが過去作品に馴染みがないので、鑑賞を躊躇うという声もあるかもしれないが、今作は『プリキュア』入門編としても優れており、気になったキャラクターが登場するシリーズを鑑賞するのもいいだろう。

 映像面では全プリキュアが勢揃いする光景はまさに圧巻の一言。特にお馴染みの爆発を背景に飛び出していく動きが77人勢揃いしたシーンなどは、過去作に目を通してきたファンであるほど感涙ものだろう。エンドクレジットロールではお馴染みとなったプリキュアの3DCGで描かれたダンスも見どころが多く、バトル描写、コメディ描写を含めて全体的に高クオリティな作品だ。

 放送開始から20周年ということもあり、幼い頃に『プリキュア』シリーズを鑑賞していた世代が親となり、子どもと一緒に鑑賞することもあるだろう。児童のみならず、大人のシリーズファンも久々に鑑賞する親も感涙する出来ということもあり、32作品ある映画の中でシリーズ最高興収と報じられたのも納得だ。

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