『リバイバル69』フェス開催までの波乱の内幕 ジョン・レノンが選曲に込めた“意味”とは

 特に余裕のステージングで瞬く間に場を支配するチャック・ベリーのギラついた佇まいはぞくぞくするほどで、彼の生誕60年記念コンサートのドキュメンタリー『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』(1988年)で披露される数々の逸話を裏付けるような振る舞いには目が釘付けになってしまった。バックバンドは現地調達が基本のチャックに急遽雇われたニュークリアスの面々の奮闘ぶりも微笑ましく、緊張と興奮がない交ぜになったような彼らの表情はイベントの意義を雄弁に物語っている。

 この『リバイバル69』の登場は、今後の『Live Peace in Toronto 1969』の受け止め方にも微妙に影響を及ぼすことになるのでは、という気もしている。イベント出演のオファーを受けた際、共演者のラインナップを聞いた途端に前のめりになったジョン・レノンはライヴ序盤のセットリスト(カール・パーキンス「Blue Suede Shoes」~バレット・ストロング「Money」~ラリー・ウィリアムズ「Dizzy, Miss Lizzy」)の選曲にどんな思いを込め、歌ったのか。

 それはもちろんイベントのコンセプトを考慮した上、ほぼぶっつけ本番だったことからもリハーサル不要なロックンロールのスタンダードが選ばれた、と考えるのが妥当なのだろう。だが、ひさびさに人前で演奏したジョンが出演後にビートルズの解散をメンバーに提案していること(リンゴ・スター談)、そしてオノ・ヨーコがトロントでのジョンのパフォーマンスを「ビートルズの呪縛から解放された瞬間」と回想していることを踏まえると、どうしてもこのステージに「意味」を求めてしまいたくなるのだ。

■公開情報
『リバイバル69 ~伝説のロックフェス~』
ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町ほかにて公開中
監督:ロン・チャップマン
配給:STAR CHANNEL MOVIES
提供:東北新社、バップ
2022年/カナダ、フランス/英語/99分/カラー/5.1ch/ビスタ/原題:Revival69: The Concert That Rocked the World/字幕翻訳:川田菜保子/字幕監修:萩原健太
©ROCK N' ROLL DOCUMENTARY PRODUCTIONS INC., TORONTO RNR REVIVAL PRODUCTIONS INC., CAPA PRESSE (LES FILMS A CINQ) 2022
公式サイト:revival69-movie.com

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