ベキル・ビュルビュル監督作『葬送のカーネーション』公開決定 深田晃司らのコメントも

 第35回東京国際映画祭アジアの未来部門に『クローブとカーネーション』のタイトルで出品されたベキル・ビュルビュル監督作『葬送のカーネーション』が、2024年1月12日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開されることが決定した。

 第28回テトゥアン地中海映画祭でグランプリ、第27回ソフィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した本作は、荒涼とした冬景色のトルコ南東部を舞台に、亡き妻を葬るため、棺を背負い歩き続ける老人と孫娘の姿が描いた現代社会の寓話。監督を務めたビュルビュル監督は、小津安二郎を敬愛し、本作で描かれている「死と旅」というテーマも、数々の小津映画から受け継いだレガシーだと語っている。

 年老いたムサは、亡き妻の遺体を故郷の地に埋葬するという約束を守るため、棺とともに旅をしている。紛争の続く場所へ帰りたくない孫娘のハリメは、親を亡くし、仕方なくムサと“棺”と共に歩いていく。故郷への旅の途中、彼らは現実と虚像の狭間を生きる様々な人たちと出会い、まるで神の啓示のような“生きる言葉”を授かりながら歩き続けていく……。

 孫娘ハメリを演じたのは、シリアで生まれ、戦争のためトルコに移住したシャム・ゼイダン。本作が初の演技経験となった。トルコで映画、舞台、テレビドラマで活躍する俳優のデミル・パルスジャンが年老いたムサを絵演じた。

 あわせて公開されたティザービジュアルでは、ハメル(シャム・ゼイダン)とムサ(デミル・パルスジャン)、そしてもう1人の家族が眠る棺が、おとぎ話のようなイラストで描かれている。さらに、「祖父の“想い”を胸に約束の地を目指す」というキャッチコピーが配置された。

 また、ビュルビュル監督と、本作に感銘を受けた深田晃司、暉峻創三からコメントも到着した。

コメント

ベキル・ビュルビュル(監督)

昨年、東京国際映画祭でワールドプレミア上映をしていただき、監督として、とてもエキサイティングな経験をしました。上映後は、思ってもみなかったお祝いの言葉や評価をいただき、心から感謝しています。死と旅という題材は、私が常に深く考えてきたテーマであり、小津安二郎監督から受け継いだレガシーでもあります(日本に来てすぐに彼のお墓参りをしました)。私たちは誰もこの世に属していません。母親の胎内にいるときと同じように、私たちの口、鼻、目は、そのときは何の役にも立たないにもかかわらず、来世への贈り物として与えられる器官です。同様に、私たちはこの世で非現実的な多くの感情や欲望を抱いています。(すべてを手に入れたい、永遠に生きたい、鳥のように空を飛びたいなど)。このような神秘のサイクルを感じながら、私は「葬送のカーネーション」を作りました。この映画を通じて皆さんとつながることができるのは、さらにエキサイティングなことだと感じています。

暉峻創三(映画評論家)

虚飾なき描写の積み重ねの果てに、突如夢幻的、魔術的とも見える光景が出現する斬新で寓話的な構成。説明描写を極力避け、挙動や表情、小道具、そして風景の力で多くを語らせる映画的演出。主人公たちの寡黙さとは対照的に、周縁的存在に大多数の台詞を付与する非一般的な脚本美学……。先鋭的で強烈な作家性を世界に印象付ける一作が登場した。

深田晃司(映画監督)

人間は理不尽に訪れる死を前になすすべもない。だからこそ、何千年も前からずっとあがき爪痕を残すように、芸術は死を描き続けてきた。戦争という理不尽に翻弄される少女にとって、死を背負う祖父の切実な歩みもまた理不尽である。しかし、その理不尽の中でもとにかく足を前に進ませなくてはならないその姿は、生きることそのもののようでもある。だからこそ、歩みの先にある「越境」の瞬間と、それを目撃する少女の姿に胸を打たれる。なぜなら、それはいずれ私たちに必ず訪れる未来の予兆でもあるからだ。

■公開情報
『葬送のカーネーション』
2024年1月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督:ベキル・ビュルビュル
脚本:ビュシュラ・ビュルビュル、ベキル・ビュルビュル
キャスト::シャム・シェリット・ゼイダン、デミル・パルスジャン
海外セールス:Alpha Violet
配給:ラビットハウス
協賛:トルコ文化観光省/トルコ国営放送局
2022/トルコ・ベルギー/トルコ語・アラビア語/16:9/5.1ch/カラー/103分
©FilmCode
公式サイト:https://cloves-carnations.com
公式X(旧Twitter):@masuda8251

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