千晴が立ったことは、来栖を助ける結果になった。事故の原因が運転手の過労にあると知った来栖は、働く人を助けるために転職エージェントに入社したが、求職者と一線を引きすぎるところはあった。それは来栖なりの照れ隠しで優しさの裏返しだが、もう一歩踏み込むなら、不慮の事故でキャリアを喪失した来栖自身が将来を模索しており、不安がおそれとして心理的な壁を築いていたとも考えられる。

　そんな魔王の心を、千晴は融かした。第4話で来栖のかつての恋人である剣崎莉子（岡崎紗絵）の「昔の来栖の方が人として好き」発言があったが、あの事故でなくしたものがあったことは、第5話ラストの来栖の笑顔が物語っていた。自身の人生と仕事のキャリアを取り戻した千晴はもはや魔王のしもべではなく、対等なバディとして求職者と向き合うことになる。

　考えてみると、キャリアアドバイザーは不思議な職業だ。仕事を探す人をサポートする、そのこと自体を仕事にする。自分が経験したことのない仕事も対象になる。ある意味、転職エージェントは禁じ手のような職業で、人間交差点でもあり、だからこそキャリアアドバイザー自身も成長できるのだろう。ともに手を携えて進むところに、仕事の醍醐味があると感じた放送回だった。

■放送情報
『転職の魔王様』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演：成田凌、小芝風花、山口紗弥加、藤原大祐、おいでやす小田、前田公輝、井上翔太、井本彩花、石田ゆり子
原作：『転職の魔王様』『転職の魔王様2.0』額賀澪 （PHP研究所）
脚本：泉澤陽子、小峯裕之
音楽：横山克、橋口佳奈
プロデューサー：萩原崇、石田麻衣、櫻田惇平
監督：堀江貴大、丸谷俊平、保坂昭一
主題歌：milet「Living My Life」（SME Records）
OPENING SONG：LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Monster」（rhythm zone）
制作協力：ホリプロ
制作著作：カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト：https://www.ktv.jp/tenshokumao/
公式Twitter：@tenshokumao
公式Instagram：＠tenshokumao