『VIVANT』が受け継ぐ黒澤明作品のヒューマニズム 素朴な人間観が一つの希望に

 そこには黒澤明が映画で伝えようとしたヒューマニズムの手触りがある。かつて福澤克雄は、『半沢直樹』は黒澤明監督の『用心棒』のような作品を目指したとインタビューで語ったことがある。

 当時はこの発言を「面白い娯楽活劇を作りたい」「現代を舞台にした時代劇を作りたい」という意味として理解したのだが、『VIVANT』を観ていると、福澤は当時から、黒澤明の世界をテレビドラマの中で蘇らせたいと考えていたのではないかと感じる。

 また、今年は、日本のトップクリエイターの作品の中に、黒澤明の気配を感じる機会が増えている。

 『羅生門』の脚本構造と比較して語られた是枝裕和監督、坂元裕二脚本の映画『怪物』、『どですかでん』の原作となった山本周五郎の小説を現代劇にした宮藤官九郎監督のディズニープラス配信ドラマ『季節のない街』、『夢』や『まあだだよ』といった晩年の黒澤映画を思わせる宮﨑駿のアニメ映画『君たちはどう生きるか』、11月に劇場公開される北野武の映画『首』も『影武者』や『乱』を意識した時代劇となるのではないかと期待しているが、彼らは自分たちなりのやり方で黒澤明映画を現代に蘇らせ、かつて黒澤が果たした役割を引き受けようとしているように見える。

 そんな中、壮大な冒険活劇を通して、黒澤明を蘇らせようとしているのが福澤克雄の『VIVANT』である。本作には『羅生門』で描かれた、何が真実だかわからない酷い世の中だが、それでも人間の善意を信じたいという意志を感じる。この素朴な人間観があるから本作は信頼できるのだ。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/

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