『PLASTIC』宮崎大祐監督の特別さは“偶然性”にあり? 小川あん×藤江琢磨インタビュー

 今回の新作『PLASTIC』の大きな特徴は、恋愛の断片化であり、時間の断片化である。イブキとジュンはエクスネ・ケディへの傾倒を通じて愛し合うようになるが、その愛はすぐに断片化へと向かう。と同時に時間の進行も断片化していく。二人の愛のゆくえを物語る語り口も、行きつ戻りつノッキングを起こし、前後逆走し、フラッシュバックと空想シーンが前触れなくインサートされ、ストーリーテリングが折りに応じて攪拌される。近年の日本映画における男女の恋愛の始まりと終わりを語り尽くした代表作に、菅田将暉&有村架純W主演の『花束みたいな恋をした』(2021年)が想起されうるし、架空のロックバンドへの傾倒で結びつく関係値という点では岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)も想起されうる。と同時に、『PLASTIC』はそうした想起を暴力的に寸断し、脱臼させる意志に貫かれてもいる。

小川あん

「シーンの撮影順が数年越しに時代を飛び越えて撮られたので、そういう点で演技の難しさはあったのですが、逆に切り取られ方が断片的であるがゆえに、自分もそれに沿って切り取っていけばいいという軽やかな感覚で各シーンの演技を作り上げていくアプローチの方法がいいかもと撮影中に気づきました。恋愛の終わりって、いろんなことが最も濃密に交錯していく状態でしょう。恋愛の始まりはピュアな感情で演じられるけど、終わりはいろんな要素が入ってくる。宮崎さんはたぶん、さまざまな感情、コロナ禍も含めたさまざまな環境、状況、そういうありとあらゆるものが入り混じった状態を映画に写し取ろうとしているのではないでしょうか」(小川あん)

「人間性もあると思います。ただ単に楽しいことよりも、切ないこと、つらいことに感知する。それはペシミスティックな現実主義とも異なる特別な人間性だと思います」(藤江琢磨)

(左から)藤江琢磨、小川あん

 インタビューの最後に、二人にこれからどんな役を演じてみたいかを尋ねてみた。小川あんは「昔はいろいろ将来の希望を考えたりしましたが、いまはもうなるようになるという心境に身を委ねています」とのことで、希望の役柄を名指しするのを避けた。「時間の流れも毎年違っていいですし、この年はいろんな役をやったけど、次の年は何にもやらなかった、とかでもいいんです」。一方、藤江琢磨の方はというと――。

「アジア映画にはたくさん出てみたい。韓国映画、台湾映画に。あと監督で言うと、ジョーダン・ピールですね」(藤江琢磨)

「ワハハハ(爆笑)。藤江くん、『NOPE/ノープ』とか、ジョーダン・ピールにめっちゃ合ってる!」(小川あん)

(左から)藤江琢磨、小川あん

■公開情報
『PLASTIC』
名古屋・伏見ミリオン座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開中
監督・脚本:宮崎大祐
出演:小川あん、藤江琢磨、中原ナナ、辻野 花 ・ 佃典彦、奏衛、はましゃか、佐々木詩音、芦那すみれ、井手健介、池部幸太、北山ゆう子、羽賀和貴、大木ボリス、平野菜月、尾野真千子、とよた真帆、鈴木慶一、小泉今日子
プロデューサー:仙頭武則、樋口泰人
音楽:PLASTIC KEDY BAND
制作プロダクション:boid
配給:boid、コピアポア・フィルム
製作:名古屋学芸大学
2023年/日本/105分/PG-12
©︎2023 Nagoya University of Arts and Sciences
公式サイト:plastic-movie.jp
公式Twitter:@plastic_movie

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