『タイラー・レイク -命の奪還-2』がアクションとともに描いた、“家族の在り方”のテーマ
本作で、アクションとともに描かれるのは、家族の在り方についてのテーマだ。タイラーが助けようとする家族の長男サンドロは、ギャングである父親や伯父と、その影響力から逃れようとする母親との間で、どちらを選べば良いのか思い悩むことになる。父親や伯父は暴力的な人間だが、一方で自分を大きな力で守ってくれる存在でもあったからである。だが、その力の“正体”が次第に暴かれていくところが、本作のアクションではない部分での見どころとなっている。
回想シーンで明らかになるのは、このギャングの兄弟の少年時代。兄ズラヴは、弟が不良グループに襲われるのを、身を挺して守ったことがある。だが家に帰ると、彼は弟の方が殴られた痕が多いことを父親に咎められ、「お前の最後の血が流れるまで身内を守れ!」と、さらに殴られてしまうのだった。
身内の安全を守る……とりわけ力の弱い存在を、自分を犠牲にしてまで助ける行為は、一見尊いことのように思える。だが、それが十分でなかったことで暴力を振るうことから分かるように、そこにあるのは愛情というより、ギャングの掟のようなものであり、もっといえば家父長制的な支配や、子どもの安全よりも親の体面を第一に考える、階級的な価値観が下敷きになっているのだと感じられる。
おそらく、サンドロの父方の家系は、このような父親による家族の支配が連綿と続いてきたのではないか。それをまた引き継いでいくのか、断ち切るのか。サンドロは選択のときを迎えることになるのである。このような悪しき慣習や価値観の継承というのは、日本を含め、多くの国や地域で続けられてきたものだ。本作は、サンドロが立たされた立場を通して、家族との関係を考えさせる内容となっているのである。このあたりは、プロデューサーと脚本を務めるジョー・ルッソの手腕が発揮されていると感じられる点だ。
そして本作では、タイラーも変化のときを迎えることになる。前述したように、彼は息子に対する自責の念にさいなまれていた。しかし元妻のミアから、ある事実が伝えられることで、ついに心に救いが与えられることになるのだ。この展開は、タイラーの心理に寄り添ってきた観客ほど、意義深いものに感じられるはずである。本シリーズは、すでに第3作の製作が決定しているという。そこでは、おそらく自責の念からでなく、息子との良き思い出と誇りのために戦う、新たなタイラー・レイクの姿が見られるのではないだろうか。
参照
※1 https://ew.com/movies/oliver-stone-slams-john-wick-marvel-the-fast-and-the-furious/
■配信情報
Netflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-2』
Netflixにて独占配信中