2023.06.30 18:00

『リトル・マーメイド』のメッセージに共感　アリエル役・豊原江理佳が目指す役者像

文・取材＝宮川翔、写真＝はぎひさこ

アリエルの姿から学ぶこと

ーー自分の声が入ったプレミアム吹替版を観たときの心境はいかがでしたか？

豊原：プレミアム吹替版も本当に楽しくて、「これは映画館に通おう！」と思ったのですが、やっぱり自分のところに関しては、粗探しというか点数を付けてしまいました。「ここはもうちょっとこうしたらよかったな」とか、「ここはちょっと棒読みだな」とか……。

ーーちなみに自己評価では何点だったんですか？

豊原：100点満点で50点くらいですね。

ーー半分は結構低いですね……もっと高くていいと思いますが（笑）。

豊原：ありがとうございます（笑）。でも、今回改めて声優さんってやっぱりすごいなと思いましたし、また機会があればぜひやってみたいです。やったことないからと最初から諦めるのではなく、これからもいろんな方法で表現することに挑み続けていきたいなと思いました。

ーー現在は舞台を中心にご活躍されていますが、もっとお芝居の幅も広げていきたいと。

豊原：広げていきたいですね。もっと表現力をつけたいと思っているので、舞台に限らず、映画やドラマ、声のお仕事も積極的にやっていきたいなと思っています。私はハーフということもあって、映画やドラマでは、イメージ的に外国人の役だったりちょっとヤンキーの役だったりしかやったことがなくて。でもいまは時代的にもそういう垣根がなくなり始めていると思うので、いろんな役に挑戦できたらいいなと。

ーーまさに今回、白人のイメージが強かったアリエル役を黒人のハリー・ベイリーさんが演じたことにも繋がる話ですよね。

豊原：本当にその通りですね。実際、私も今回の『リトル・マーメイド』を最初に観たときに、ハーフであることや外見にコンプレックスを持っていた自分が、一番自分自身にレッテルを貼っていることに気づいてハッとしました。偏見を持たないことの大切さをこの作品に教えてもらったので、皆さんにもぜひそのメッセージを受け取っていただきたいです。

ーーアリエルの姿から学ぶこともたくさんありますよね。

豊原：アリエルは、お父さんや周りの人たちに反対されながらも、自分の価値観を大事にして、心躍るものにしたがって、正直に行動していく。その先に、自分の声を聞いたからこそ見れる景色がやっぱりあると思って。SNSが普及しているいまは情報量も多くて、いろんな人の声がすごく入ってくるので、実生活の中でそういう行動を起こすのはなかなか難しいとは思うのですが、逆にそういう時代だからこそ現代の人に刺さる作品なんじゃないかなと思います。私自身、そういうメッセージがすごく刺さりましたし、アリエルの行動に共感することができました。

ーー特に日本は同調圧力みたいなものも強いですしね。

豊原：そうなんですよね。「普通こんなことしないじゃん」とか「そんなことやったってカッコ悪い」とか、そういう声が聞こえてきたら、例え自分の意見を持っていたとしても、そっと心の中にしまってしまうと思うんです。特に若い人にはそう思ってほしくないので、アリエルの姿から何かを感じとってほしいと思っています。

ーーでは最後に、豊原さんが目指す役者像について教えてください。

豊原：今回、この『リトル・マーメイド』でアリエルのプレミアム吹替版声優をやらせていただき、テレビ番組などで歌わせていただいたりする中で、「頑張ろうと思いました」とか「元気になりました」という声をいただくことが増えたんです。そうやって人の背中を押すことができたり、寄り添えたりすることがエンタメの本当に素晴らしいところであり、役者としてのやりがいだと思うので、本当に苦しんでいる人や一歩踏み出せないような人にも寄り添えるような、優しい表現者になっていきたいです。

豊原江理佳の撮り下ろしカット

■公開情報
『リトル・マーメイド』
全国公開中
監督：ロブ・マーシャル
音楽：アラン・メンケン、リン＝マニュエル・ミランダ
出演：ハリー・ベイリー、メリッサ・マッカーシー、ジョナ・ハウアー＝キング、ハビエル・バルデム
配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題：The Little Mermaid
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