『ラストマン』福山雅治が日曜劇場リベンジを完遂 圧倒的な人間ドラマの熱量

 『ラストマン―全盲の捜査官―』(TBS系)最終話を観終えた今、湧き出る感慨を抑えることができない。大団円とはこういうものだと納得するとともに、希望を抱かせるラストシーンに目頭が熱くなった。

 はやる気持ちをなだめつつ、簡単に内容をおさらいしよう。41年前の真実を追う皆実(福山雅治)と心太朗(大泉洋)だったが、泉(永瀬廉)が刺され、犯人が山藤(金田明夫)と知ってショックを受ける。警察の威信をかけた捜査に加えて、池上(渡辺哲)殺しの黒幕である大物政治家の弓塚(石橋蓮司)を起訴に持ち込むため、検察特捜部も動き出す。その結果、土地取引や道路建設事業をめぐる談合や暴力団との癒着が明らかになった。41年前の事件にも弓塚が関与しており、投資に失敗して多額の借金を背負った皆実の父・誠(要潤)は弓塚をゆすろうとして、反対に池上を介して雇われた鎌田國士(津田健次郎)に殺された。もみ消しに加担した清二(寺尾聰)も自らの罪を認め、一件落着と思われたが皆実と心太朗は釈然としない。入院中の鎌田を訪ねると、そこには清二の姿があった。

「触れてはならないパンドラの箱に入っているのは、もっと小さな秘密なのではないか」

 ミステリー・サスペンスにおいて最大の謎は人間であり、そこにこそ物語の醍醐味がある。刑事ドラマの見せ場である大捕り物/捜査を前半でコンパクトにまとめた『ラストマン』最終話では、尺をたっぷり取った後半で41年という時間の連なりとそこで織りなされる人間模様を、映画さながらの筆致で描き出した。

 ここで明かされた真相はある意味平凡なものである。多くの視聴者がうすうす気づいていた皆実と心太朗の間にある特別なつながりと背景は、誤解を恐れずに言えば典型的な昭和のメロドラマであり、ノスタルジーを濃厚に感じさせるものだった。経済成長を続ける時代に出会った鎌田と妻の勢津子(相武紗季)は将来を誓い合うも、地上げ屋の誠によって仲を裂かれる。誠の黒い嫉妬がむごたらしい帰結を招き、不正に手を貸していた若き日の清二(奥野瑛太)が自らの罪とともに葬ろうとしたことで冤罪が生まれた。“殺人犯の父親”はこうして誕生した。

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