アクリ瑠嘉がロイヤル・バレエ『シンデレラ』で得たものとは? 映像ならではの魅力を語る

 世界最高の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラの舞台を、特別映像を交えてスクリーンで体験できる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』。6月16日から6月22日にかけて、一週間限定で公開されるのが、ロイヤル・バレエ『シンデレラ』だ。

 初演75周年を記念して『シンデレラ』はロイヤル・バレエではおよそ10年ぶりのリバイバルとなり、舞台装置や衣装も一新されての新プロダクションとなる。リアルサウンド映画部では、『シンデレラ』に義理の姉役で出演するアクリ瑠嘉にインタビュー。父アクリの父マシモ・アクリも新国立劇場バレエ団でアシュトン版『シンデレラ』の義理の姉を演じている。親子二代で同じ役を演じることから、本作の魅力まで話を聞いた。(編集部)

「表現は小さい頃からずっと家庭にあるもの」

――この役が決まったときの気持ちを聞かせてください。

アクリ瑠嘉(以下、瑠嘉):この10年、カンパニーではいろんな役をやってきましたが、こうしたキャラクターの役もやれるということで楽しみな気持ちです。父親が昔やっていた作品なので「来るかな?」とは思っていましたし、ケヴィン(ロイヤル・バレエ団芸術監督:ケヴィン・オヘア)には「ぜひやりたい」と言いました。楽しい経験になりましたね。

――お父様であるマシモ・アクリさんがかつて出演した作品に参加というところで、何か感じることはありましたか?

瑠嘉:父親は義理の姉役で、僕は妹の方なので、全く同じというわけではありませんが、父と2人でペアになれますね。父親も母親も、みんなでイギリスまでこの作品を観にきましたが、そのことにプレッシャーは全くありませんでした。それよりも家族と一緒に踊りたかったですね。

――そうでしたか。

瑠嘉:(フレデリック・)アシュトンの振り付けが曲にすごく合っているので、一度覚えると曲を聞くたびにその振りが出てくるものですから。家族が観にきてくれた日の前日も、家で最初から最後まで一緒に踊りました。

――すごい! 豪華すぎる舞台ですね。

瑠嘉:いつか家族でやれたら本当に面白いと思います。

――それこそ、弟のアクリ・士門さんとは8月に共演ですものね。

瑠嘉: STAR DANCERS BALLETで一緒に『ドラゴンクエスト』をやるのが、夏の楽しみの一つです。いろいろな舞台をやるにつれて、どんどん思い入れのある作品にしていきたいですね。

――『シンデレラ』の義妹は表現力を問われる役だと思います。お父様からの表現力を譲り受けたということも、もちろんあるとは思いますが、この作品の表現という点においてはどう考えていますか。

瑠嘉:表現は、僕が小さい頃からずっと家庭にあるものでした。父も表現力が豊かなダンサーだと思っているので、そこは父譲りかもしれません。また小さい頃から井上バレエ団で『くるみ割り人形』のフリッツを踊ったりしてさまざまなことに挑戦させてもらい、いろいろな経験を積んできたことが生きたのだと思います。ロイヤル・バレエは特に表現に強いカンパニー。リハーサルをする中で、先輩や仲間たちから自然と見て学び、自分たちで体験して学べる環境だと思います。だからコールドで入って、プリンシパル、ソリストの方々がアクティングしているのを見て学ぶ以上のものはないと思いますね。それでいうと、僕ももう経験者として教える立場にあるのかなとも思います。

――ありがとうございます。今回、意地悪な義理姉、妹として一緒に踊ることになるギャリー・エイビスさんはどんなダンサーですか? また一緒に演じる上で工夫したことなどあれば教えてください。

瑠嘉:ギャリーさんはロイヤル・バレエが誇るプリンシパルキャラクタアーティストの1人です。本当にパッションがすごい人で、『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー役や『白鳥の湖』のロットバルト役など色々な役で知られていると思います。彼は本当に経験値がすばらしい。いろんな事をやっていて知識もたくさんあるダンサーです。今回の『シンデレラ』でも義姉役を演じながらステージングを教えていたし、バレエを1から10まで全てわかっている方です。一緒に踊ることになり、学ぶこともたくさんありました。ギャリーさんは強烈な義理の姉の役。すごく意地悪で強烈なパワーをリハーサルの時から感じました。役づくりに関しては、最初は僕もどうしていいか全くわからなかったので、とりあえずステップを覚えていたのですが、ギャリーさんのパワーにリアクションで対応してバランスをとる中で、義妹はちょっとかわいらしく、お茶目で抜けているようなキャラクターにしようというのがどんどん出てきました。「何よりもお姉さんが大好き」な妹のイメージも頭の中にありましたね。ギャリーさんとのチームワークだったので、2人で築くという経験ができました。

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