過去最大のピンチに追い込まれる喜多見。映画では喜多見と千晶の絆がクローズアップされる。ドラマ版の千晶は東京海浜病院の循環器外科医で、比奈の指導医でもあり、喜多見たちを一歩離れた場所から見守る立場だった。仲里依紗がこの年代で最高の女優の一人であることは間違いないが、今作の仲と鈴木のぶつかり合いには魂を持っていかれた。日々鍛錬を怠らず、自己ベストを更新し続ける鈴木にとって、アクション要素があり、ストレートな情熱を発揮できる『TOKYO MER』は端的にハマり役である。仲との真剣な打ち合いによって、その魅力はかつてないほど高められた。

　「人を助ける」「命を救う」と言うことはたやすい。本作を観た後では、その言葉を安易に口にできなくなる。救いようのない悪意がある一方で、本作には無名の人々の善意の集合で社会が支えられていることも書き込まれている。そうした中で、日々命と向き合っているのが医療や救助の最前線で奮闘する方々だ。各地で災害や事件が頻発し、コロナ禍を経て命の尊さが共通認識になった今、生まれるべくして生まれたのが『TOKYO MER』といえる。命を守ろうとする本作は、この社会に生きる私たち自身の物語でもある。

■公開情報
劇場版『TOKYO MER～走る緊急救命室～』
全国公開中
出演：鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー（SixTONES）、フォンチー、菜々緒、杏、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子
監督：松木彩
脚本：黒岩勉
配給：東宝
©2023劇場版『TOKYO MER』製作委員会
公式サイト：https://tokyomer-movie.jp/
公式Twitter：tokyo_mer_tbs
公式Instagram：tokyo_mer_tbs