『わたしのお嫁くん』高杉真宙の“過剰”が意味するものは? 嫁夫の反転がもたらす気づき
本作の面白いところは、従来の男性/女性に押し付けられてきたジェンダーロールが真逆に入れ替わっているからか、より一層両者の気持ちがわかり感情移入できる点だろう。そして山本の“嫁入りシュミレーション”は翻って穂香にとっての“旦那シュミレーション”でもあるという親友・高橋君子(ヒコロヒー)の指摘は流石で、的を射ている。
家事に精を出す山本に感謝はしつつも「自分には何もできないし返せるものはない」と言ってしまう穂香。それは、自分自身が最も嫌う存在である気遣い力”を当たり前に“嫁力”と変換し、勝手に “理想の嫁像”を押し付ける周囲の男たちと何ら変わりないことに気づいたのだろう。
失敗に終わったかに思われた“嫁入りシュミレーション”でわかったことは、旦那である穂香にも返せることがあったということ。それは家事という労働に、正当な報酬を支払うこと。“嫁による家事”を“旦那なんだから”と当たり前のこととして無償で受け取ろうとしないこと。つまりは役割分担をし、互いの役目に言葉だけでなく行動で、目に見える形で感謝を示し“持ちつ持たれつ”の関係を探ることだった。
この学びを胸に、行動力のある穂香と山本は引越し先を決め、新居での共同生活にステージを移していく。
そして既にダダ漏れにも思える山本から穂香への好意だが、ついに穂香への気持ちを、“良かれ”と思える原動力が生まれる理由を、はっきりと行動で示した。
「朝まで嫁でいられるかわからない」とはラストの山本の言葉だが、確かにこれは言い得て妙だ。彼が言わんとした意味を拡張するものの、役割は常に固定である必要もないし、時と場面に合わせてフレキシブルに対応できれば、より“2人らしい”心地よさの追求に近づくだろう。
■放送情報
『わたしのお嫁くん』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:波瑠、高杉真宙、前田拳太郎、仁村紗和、ヒコロヒー、竹財輝之助、古川雄大、中村蒼ほか
原作:柴なつみ『わたしのお嫁くん』(講談社『Kiss』連載)
脚本:橋本夏
音楽:橋本由香利
プロデュース:中野利幸(フジテレビ)
プロデューサー:芳川茜(共同テレビ)、山崎淳子(共同テレビ)
演出:紙谷楓(共同テレビ)、城宝秀則(共同テレビ)、水戸祐介(フジテレビ)
制作協力:共同テレビ
制作・著作:フジテレビ
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