M・ナイト・シャマラン監督が語る、低予算での映画作り 「僕たちは“寿司”を作っている」

 “究極の選択”をテーマに、家族愛と恐怖を描いた終末スリラー『ノック 終末の訪問者』が現在公開中だ。人里離れた山小屋で休暇を過ごしていた3人の家族のもとに謎の4人組が突如として現れ、家族の犠牲か世界の終焉の選択を迫る本作。コロナ禍で製作された前作『オールド』に続く新作を短いスパンで撮り上げたM・ナイト・シャマラン監督に話を聞いた。

映画『ノック 終末の訪問者』M・ナイト・シャマラン監督独占インタビュー

「僕は制約の中で仕事をするのが大好き」

ーー神話的なストーリーとなった今作は、シャマラン監督にとって原点回帰とも言えるような作品だと感じました。自身のフィルモグラフィーにおいて、今回の『ノック 終末の訪問者』はどのような立ち位置だと捉えていますか?

M・ナイト・シャマラン(以下、シャマラン):僕は様々な“色の組み合わせ”を実現しようとしています。特に気にしているのは、そのバランスが正しく取れているかどうか。時々、非常に複雑なものになってしまって、例えば一回観ただけではなかなか消化しきれない、2回ぐらいじっくり観ないといけない作品も存在します。今回の『ノック 終末の訪問者』は、その色合いのバランスとして、初見でもよく理解できるものになっていると思います。映画はどの作品もそれぞれ違った味わいを持っていますが、この映画の場合は特に、その中心に“とても美しい愛”があります。暗いものの中に美しい愛の物語がある、というところがよく感じられる作品になっていると思います。

ーー“人里離れた森の奥深くにあるキャビン”というほぼワンシチュエーションで物語が展開していきます。そのような限られたシチュエーションで映画を撮ることの醍醐味を教えてください。

シャマラン:おとぎ話のようでもありますよね。一方で、僕はそういう制約の中で仕事をするのが大好きなんです。材料はとにかく少なくする。いつも撮影班に言っていることなんですが、「僕たちは“寿司”を作っている」と。最も少ない材料で、最もクオリティの高いものを作っていく。それを一生懸命やれば、観客も全てのニュアンスの味わいを得ることができると思っています。この8〜9年、それが映画作りをする中でずっと心がけてきたことです。

ーー前作『オールド』はあなたにとってコロナ禍以降初の映画製作になったかと思います。今作『ノック 終末の訪問者』においてもコロナを匂わせる描写がありました。新型コロナウイルスは映画制作、または興行にどのような変化をもたらしたと思いますか?

シャマラン:僕はなるべく低予算で映画を作ろうとしています。できるだけコストを低く抑えることで、クリエイティブ的にも大胆な挑戦ができると思っています。どういうところでそのチャレンジをするかというと、映画作りに関わる人であったり、題材であったり、映画としてのリスクであったり、あとは役者もそう。デイヴ・バウティスタのような役者を使おうという大胆なチャレンジをすることも、映画全体を低予算に設定するからこそできることだと思っています。ただ、コロナ禍、そしてコロナ禍以降の現在においても、コストはどんどんと上がっています。今だと映画の作業用テーブルを買おうと思ったら、以前に比べるとだいぶコストや時間がかかります。人を探そうにも昔より見つけにくくもなっています。なので僕が当初目標にしていた作り方はどんどん難しくなってはいるんですが、それでも何とかやりくりはできている、という感じです。それからクリエイティブ的なところで言うと、“孤立”という概念が今回のパンデミックで特に深まり、僕たちは精神的に病んでしまったと思っています。僕たちのメンタルヘルスはいま最も弱まっているので、そういう議論をどんどんしながら、映画の中で取り上げるべきだとも思っています。

■公開情報
『ノック 終末の訪問者』
全国公開中
出演:デイヴ・バウティスタ、ジョナサン・グロフ、ベン・オルドリッジ、ニキ・アムカ=バード、ルパート・グリントほか
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン、スティーヴ・デスモンド、マイケル・シャーマン
原案:ポール・トレンブレイ著『 The Cabin at the End of the World』
製作:M・ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストック、アシュウィン・ラジャン
製作総指揮:スティーヴン・シュナイダー、クリストス・V・コンスタンタコプーロス、アシュリー・フォックス
配給:東宝東和
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