『らんまん』は“ままならなさ”を描く朝ドラに? 万太郎の成長を“3段階”で見せた意図

 朝ドラこと連続テレビ小説は第1、2週は子役であることが多い。『らんまん』(NHK総合)もそうで、第2週、第10のラストに主人公・万太郎と彼を支える竹雄が本役の神木隆之介と志尊淳になった。

 神木と志尊に至るまでは、少年・万太郎(小林優仁)が名教館に通い、池田蘭光(寺脇康文)というすばらしい師匠のおかげで自由に学ぶ喜びを知る。おりしも大政奉還によって江戸から明治へと時代が変わり、価値観もがらりと変わって、士農工商の身分制度もなくなる。

 武士が絶対の時代ではなくなったからこそ、万太郎はやりたいことに邁進しやすくなった。とはいえ、万太郎のような自由人はなかなか理解されない。竹雄(南出凌嘉)は使用人として働くことを選択し学校には行かない。姉の綾(高橋真彩)は学校には行けるようになったものの、女性は酒蔵に入ってはいけないという男女差別は容易には変わらないだろう。父母亡き後、女手ひとつで万太郎を育ててきた祖母タキ(松坂慶子)は男親がいないから万太郎が峰屋の当主として育たないのではないかという不安に駆られる。誰もが、世間のこうあるべきというルールに縛られている。だからこそ、そこから解き放たれようとする万太郎が生き生きと輝く。

 名教館とはもともとが武家の子だけが入れる場だったが、特例として万太郎が入学したとき、武家の子・広瀬佑一郎(岩田琉生)が商人の子としてバカにした。ところが武士の時代ではなくなると、佑一郎は人が変わったように謙虚になる。蘭光は名教館が廃止となって政府が行う小学校教育がはじまるにあたり、万太郎と佑一郎を1泊2日の自然学習に連れ出す。元武家の子、商家の子の代表ふたりが自然のなかで平等に存在し、川の魚を焼いて食べて、はじめてお互いの話を交わし合うところは、蘭光の行ってきた教育の仕上げだったにちがいない。

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