『グリッドマン ユニバース』は思わず叫びたくなる快作! 作り手たちの力強い宣言に涙

 押井守は書籍『映画の正体 続編の法則』(立東舎)の中で以下のように述べている。

「みんな好きなようにしか映画を見ないんだよ。そしてこの好きなようにしか見ないんだというところに映画の本質があるし、映画の面白さがある。これは否定できないし、否定するべきでもない」(P273)

 映画に限らず、表現とは創作者と受け手の相互誤解の上に成り立つものである。創作者の意図通りの物語が伝わらないことは、往々にして起こりうる。しかしその“誤解”こそが、作品を面白いと感じたり、あるいは多様な批評性が生まれる要因である。この押井の論調に、筆者も同意する。

 その誤解を元に多様な解釈が可能な作品こそが『グリッドマン ユニバース』だ。今回は本作を制作したTRIGGERの歴史も踏まえながら、革新的な物語について考えていきたい。

 『グリッドマン ユニバース』は1993年に放送された特撮作品の『電光超人グリッドマン』を基に制作されたTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』と『SSSS.DYNAZENON』の続編となる劇場アニメだ。制作は国内外を問わずファンが多く、熱い物語展開と映像に定評があり、日本を代表するスタジオの1つであるTRIGGERが務めている。

 『SSSS.GRIDMAN』を語る際に多く見受けられるのが『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)に対する既視感だ。作中ではBGMが少なめで独特の間を用いた会話劇を中心とした演出や、実写を用いた演出なども行われる。実写を用いたアニメというと『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』を連想させる。

 もちろん、『エヴァ』自体が大ヒット作品のために制作側によるオマージュであったり、あるいは制作者が意図しなくても、視聴者が描写を無意識に読み取る場合もあるだろう。しかしこれがTRIGGER制作のアニメとなると、単なるオマージュというだけでは止まらない。なぜならば、TRIGGERは『エヴァ』を制作したGAINAXに所属していたスタッフによって立ち上げられたスタジオだからだ。

 ここで簡単に歴史をおさらいしておきたい。GAINAXは『エヴァ』など多くのアニメ作品を制作したスタジオだ。しかし当時の中心クリエイターであった庵野秀明などの一部スタッフは、2006年に独立、スタジオカラーを設立し、袂を分かっている。

 TRIGGERを代表するクリエイターである今石洋之はGAINAX入社後、『エヴァ』の動画などを手がけていた。そして『天元突破グレンラガン』などいくつかの作品を手がけたのち、2011年8月22日にTRIGGERの代表取締役社長を務める大塚雅彦、取締役の舛本和也らとスタジオを設立し独立、GAINAX時代のスタッフたちを一部受け入れて現在に至っている。つまり庵野秀明監督らのスタジオカラーとは、同じスタジオから独立したことになる。

 さらに円谷プロという特撮の老舗であり、最も影響力のあるスタジオからTVアニメの題材を借り入れに向かう点も、大きなポイントと言えるだろう。雨宮哲監督は『SSSS.GRIDMAN』の企画設立段階にて「最初は『ウルトラマン』のアニメ化を提案した」と述べている。特撮ファンである庵野秀明監督と『ウルトラマン』の関係は切っても切れないものであり、『エヴァ』にも影響を与えていると指摘する声は大きい。上記のような経緯を持つTRIGGERが『ウルトラマン』をテーマにしたTVアニメを企画していたというだけでも、長年アニメシーンを追いかけてきたファンが『エヴァ』を連想する要素は揃っているのだ。(※)

 またGAINAX作品の影響は他の要素にも見受けられる。『SSSS.GRIDMAN』の主要人物である宝多六花の母親は、見た目の類似性や声優が新谷真弓であることから『フリクリ』の主人公であるハル子の影響を指摘する声もある。これらの「〇〇っぽさ」というのは、全てが制作者の意図したものとは限らないが、そのように解釈されることも想定してデザインされている可能性がある。

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