『フェイブルマンズ』で主人公役に抜擢 ガブリエル・ラベルが見たスピルバーグの素顔

スピルバーグがやっていることは「友達と一緒に映画を作る」ただそれだけ

ーー映画を観るとわかるように、サミーは少年時代、いわゆる一般的なティーンエイジャーと比べてかなり特殊な人生を過ごしていますよね。

ラベル:そうなんです。なので、役の準備のために、このストーリーのどこまでが実際に起こったことなのかを知りたかったんです。それでスティーヴンに聞くと、「サミーが経験したことは実際に起こったことだ」と。なので、当時彼がどう思ったのか、人生についてどう思っていたのか、人間関係や自分のことをどう思っていたのか、周りの人についてどう感じていたのかなどについて、2人で話し合いました。その中で、彼が育っていく中でどんな感情的経験をしたかを学びました。なので、役作りとしては、スティーヴンに教えてもらったことと、彼とトニー・クシュナーが書いた言葉を全て取り込みました。サミーは多くの人が経験することを経験したんだと思うんです。親のことを、初めて保護者ではなくて、欠点のある人間として見るようになった。それが彼の世界観を一変させたんです。もし彼らが完璧でないなら、誰も自分を安全に守ってくれない。自分は世の中でたった一人で、あらゆる達成や設定した目標は自分だけのもの。夢や情熱があって、親から巣立って自分で歩き出す年頃で、両親の離婚を経験して……。それって怖いことですよね。誰もが経験するような普遍的な真実だと思うし、僕も経験したから共感できるんです。でもこのストーリーがすごいのは、キャラクターが経験したことをまるで自分が経験したかのように実感できること。僕は、役者としてどうやってそこに至るかを実践するのみでした。

ーー映画界のレジェンドとも言えるスピルバーグ監督と一緒に映画を作った経験は、あなたにとってどのようなものになりましたか?

ラベル:スティーヴンがやってることって、撮影監督のヤヌス・カミンスキー、脚本のトニー・クシュナー、プロデューサーのクリスティ・マコスコ・クリーガーといった友達を集めて、自分もカメラを持って、外に出て映画を撮る。ただそれだけだということがわかりました。友達と一緒に映画を作るーー本当にそれだけなんです。なぜなら映画が大好きで、映画を作らずにはいられないから。彼は絵コンテも描かないし、事前にプランも立てないんです。実際に現場に行って、そこでどうにかやってみるんですよ。愛や情熱を持って、一生懸命このプロジェクトのために働いている彼の姿を見て、ものすごく触発されました。もちろん生まれつきの才能もありますが、スティーヴンほどの人がたくさんの時間や労力を映画に捧げているのを目の当たりにして、執念やスキルのほうがずっと大きいことに気づきました。そういう人たちが集まった現場で過ごす3カ月間は、本当に刺激的な日々でした。

ーー作品自体もそうですが、あなたも俳優として賞レースなどでたくさんの評価を受けています。今後、どのような俳優を目指していきたいですか?

ラベル:今回、僕はサミーを演じるために自分を大きく変えなくてはいけませんでした。姿勢や歩き方、笑い方……髪の毛もストレートにして、衣装を着て、本当に他の人になった気がしたんです。また、ポール・ダノやミシェル・ウィリアムズと一緒に仕事をして、彼ら自身と彼らが演じるキャラクターがどれだけ違うかも知りました。ポールとミシェルが新しいキャラクターを作り上げていくのを見て、ポートフォリオが目の前にある感じがしました。そういうふうに、僕は自分と全く違う人になれる俳優になりたい。自分の能力を最大限に使って、見た目も話し方も歩き方も世界観も違う、新しい人になる。僕は、そういうことができる俳優を目指しています。

■公開情報
『フェイブルマンズ』
全国公開中
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:マーク・ブリッジス
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
配給:東宝東和
151分/原題:The Fabelmans
©Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://fabelmans-film.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp

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