松嶋菜々子、『どうする家康』に生きる『利家とまつ』での経験 意識するのは“まっすぐさ”

 毎週魅力的な登場人物が登場するNHK大河ドラマ『どうする家康』。その中でも鮮烈な印象を放ったのが、徳川家康(松平元康/松本潤)の母・於大の方を演じる松嶋菜々子だ。松本とは、『花より男子』(TBS系)では姉弟に、『ラッキーセブン』(フジテレビ系)では社長と社員に、『となりのチカラ』(テレビ朝日系)では隣人と、さまざまな関係で相性の良さをみせてきたが、本作ではついに親子に。

 第3回では、生き別れた親子の“感動の再会”だけでは終わらない鮮烈な芝居で、視聴者の心を掴んだ松嶋。『利家とまつ』(NHK総合)以来となる大河ドラマ、そして初の古沢良太作品出演について、じっくりと話を聞いた。

「まっすぐであることを意識しています」

――連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)出演時にインタビューさせていただいた際、『利家とまつ』もキャリアにおいて重要な作品だったとお話ししていただきました。今回、久々の大河ドラマ出演となりましたが、改めて『利家とまつ』出演時の思い出を振り返っていただけますか。

松嶋菜々子(以下、松嶋):大河ドラマは錚々たる方々が出演されてきた作品なので、お話をいただいたときは、「私に務まるのかな」と思ったのが正直なところでした。でも、エグゼクティブプロデューサーの浅野(加寿子)さんに、「今回の大河では“若いパワー”を出したい」とお言葉をいただいたこと、竹野内豊さんや伊藤英明さんら同世代の俳優の皆さん、そしてなんと言ってもとても信頼できる俳優である唐沢寿明さんが主演だったことで、「頑張ろう!」と思ってお引き受けしたのを覚えています。朝ドラや大河ドラマへの出演は、家族・親戚もすごく喜んでくれます。どちらもドラマ作品という以上に、皆さんの生活に根付いた作品なので、そんな作品に出演させていただけることには格別の喜びがあります。『なつぞら』で朝ドラに久しぶりに出演したこともうれしかったですが、『どうする家康』で再び大河ドラマに出演できることも特別な喜びがありました。

――『利家とまつ』では織田方、今回は徳川方ということで、双方の陣営を知っているからこその面白さもあると思います。

松嶋:そうなんです。いろんな面で『利家とまつ』の経験が生かされています。『利家とまつ』のときは、カツラを付けていたのですが、長い時間装着すると、頭が引っ張られて、首は痛くなるし、背中も痛くなるしで、ものすごく身体に負担がかかったんです(笑)。なので、今回は演じる前に、背中や首を事前に鍛えて臨みました。所作などに関しても、『利家とまつ』で1年間とおして経験できたことが、そのまま今回にも生かすことができていると感じています。とはいえ、『利家とまつ』から20年の時間が経って、最新の技術が現場にもたくさん導入されていて、新鮮なことも多いですね。

――於大の方は脚本の古沢良太さん直々のお願いで松嶋さんへのオファーだったそうですね。

松嶋:「息子である家康や嫁である瀬名(有村架純)に向けて、きついこともずけずけと言う於大ですが、松嶋さんだったらそれが嫌味なく伝わると思います」とお言葉をいただきまして。非常にうれしかったですし、その期待に添えるように演じていきたいと強く思いました。台本を読んでいても、於大さん自身は決して“嫌味”を言っているつもりはまったくなくて、正直で熱い方なんだなって。戦国という波乱の世の中で、家をしっかり守る、戦のない時代を作り上げる強い息子に育ってほしいと心から思っているからこその言葉なんだと。なので、演じる上でも、まっすぐであることを意識しています。

――第3回では元康と於大の方の16年ぶりの再会が描かれました。“感動の再会”だけで終わらない、厳しさの残るシーンとなりましたが、振り返ってみていかがですか?

松嶋:台本を読んだとき、於大の心情としては、久しぶりに息子と再会できる喜び以上に、何を今伝えないといけないか、そしてそれに息子がどう応えてくれるのか、その思いの方が強かったのではないかと感じました。とても大事なことを、強く、元康に響くように、直球の言葉でぶつけなくてはいけないなと。なので、私の中では、きつい言葉という認識はなかったです。於大の柔らかい部分と強い部分、両方の要素が詰まった非常に濃厚なシーンでした。

――於大を演じるにあたって、心がけていることや、役作りで気をつけていることはありますか?

松嶋:「物静かだけど芯が強い」。そんなイメージで役作りを始めたのですが、思った以上にはじけているシーンもありまして(笑)。現場でも、「もっともっとやってください!」という要望もありました。何シーンか撮った後に、リハーサルで「松嶋さん、つかみましたね」と言われて(笑)。予想以上にはじけているシーンもあるので、その点も楽しんで観ていただけたらうれしいですね。決して出演シーンが多いわけではないのですが、家康の人生の重要な場面で登場することが多いので、そのシーンでは女性陣の元気や明るさ、家康が守りたいと思う家庭の象徴を表現できればと思っています。

――史実を踏まえると、於大の方の人生もなかなか壮絶です。彼女の運命を松嶋さんはどのように捉えていますか?

松嶋:波乱万丈の人生ですが、この時代の中ではすごく長生きをされるんですよね。ずっと家康を支えるられたこと、彼が作っていく国を見ることができたという点では、幸せな人生だったのかなと思います。

関連記事