『悪の花』心震わすイ・ジュンギの神演技 愛する人のためについたウソは悪なのか?
最愛の夫が連続殺人犯かもしれないという状況に置かれた妻であり、刑事であるチャ・ジウォン。正義感が強く人の心を読むことに長けているジウォンは疑い始めてから葛藤に苦しむ。完璧な信頼を築いてきたからこそ、確かな関係を揺さぶる真実と向き合うのはあまりにも残酷すぎる。だが本作の見どころでもあるエピローグの回想シーンで2人の出会いからこれまでの過程が丁寧に描かれることにより、リアルタイムでヒソンとジウォンのそれぞれの感情を受け取ることができるのだ。ジウォンを演じるムン・チェウォンは『クリミナル・マインド:KOREA』(2017年)でイ・ジュンギと共演し、本作では夫婦役に。イ・ジュンギに続く熱演に深く心を打たれるはずだ。また準主役の記者キム・ムジンに抜擢されたソ・ヒョヌは、最近では『エージェントなお仕事』(2022年)で芸能プロダクションのマネージャー役でも活躍していた俳優。鍵を握る重要人物となるムジンとヒソンの関係性は注目ポイントである。
ジウォンと同僚の刑事との雑談シーンで、もしパートナーに急に薬を渡されたり、怪しげな食事を出されたりしたらどうするかという話題が出る。その時のジウォンの答えはこうだ。「真実は人生を壊すことがある。その真実がいつか明らかになるとわかっていても、その瞬間を遅らせられるなら、私は薬を飲む」。一般論としてはありえない考えなのかもしれない。けれど回を追うごとにジウォンの気持ちを理解する瞬間がやってくる。愛する人のためについたウソは悪だと言い切れるのだろうか。正しいことが愛であるとは限らない。愛、憎しみ、信頼、裏切り、真実、偽り、冷酷さ、温かさ。全てには両面があるから悪の中であっても花は咲くのだろう。この意味をぜひその目で確かめてほしい。
■配信情報
『悪の花』
Netflixにて配信中
(写真はtvN公式サイトより)