『女神の教室』と『ビギナー』の違いは? 時代を経ても変わらないリーガルドラマの真髄

 『ビギナー』では、具体的な事件について議論が交わされる。第7話「アンパンは誰が食べた?」と続く第8話では、妻を殺した男性の殺害動機と同意の有無についてグループを二分する激論となった。生活苦から殺してほしいと妻に懇願され、やむなく応じたと考える羽佐間(オダギリジョー)に対して、桐原(堤真一)は、殺意は確定的であり、犯行の残虐性を根拠に同意殺人を否定。公判で被告人質問を目にした楓(ミムラ)は悩んだ末、執行猶予なしの殺人罪の結論を出す。

 人を裁くことの重さを理解した上で、どのような判決を下すべきか苦悩する姿には、それぞれの考え方や人生観が投影され、時に仲たがいを起こすほどの真剣な議論を通じて、彼らが担う使命の大きさと強い絆が垣間見えた。『女神の教室』では、雫(北川景子)と藍井(山田裕貴)が担当する実務演習で、学生たちが法律問題をめぐって討論する。議論の対象となるのはシンプルなケースだが、学生たちは雫が与えるヒントやそれぞれの学びと経験から得た気づきを通して、事案の奥にある深層に手を延ばしていく。

 彼らの議論は最終的にその事案にとって最善の答えを導き出すのだが、結論に至る過程で自らの内面を見つめ、法曹として生きる意味を問い直していく。学ぶことが人間としての成長につながる点で『女神の教室』と『ビギナー』は相似形をなしている。あえて違う点を挙げれば、『女神の教室』では旧試験時代のような登場人物の個人史への言及が薄くなっているが、その分、抽象度の高い議論が交わされており、ロースクールの3年(2年)間はそれらを補って余りあるドラマの豊富な材料を提供している。

 目隠しをしながら真実を探り当てるテミスをタイトルに冠した『女神の教室』は、青春群像劇というフォーマットが、人間ドラマとしてのリーガルドラマで今なお有効であることを示した。『ビギナー』を通して『女神の教室』を観ることで、時代の変化と時を経ても変わらない法律家の姿を実感できるはずだ。

■放送情報
『女神の教室~リーガル青春白書~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博
脚本:大北はるか、神田優
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」(SDR)
法律監修:水野智幸(法政大学大学院法務研究科)
制作・著作:フジテレビジョン
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