『灰原哀物語』は安室透の魅力もギュッと詰まった一作 コナンフリークが楽しめる演出も?

 なにより『灰原哀物語』という名前が表している通り、やはりこの作品の最注目キャラクターは灰原だ。車内で組織のメンバーの匂いを感じ取った灰原は、組織を逃れた身として命を狙われる恐怖やプレッシャー、そして研究者としてAPTX4869という毒薬を開発してしまった責任と葛藤に苛まれながらも、自身を支えてくれた友人たちを危険に晒さないために奔走する健気で切ない姿に胸を打たれる。組織から逃れてきた当初の冷たく、人を信頼していないような言動を繰り返していた灰原の姿を思うと、コナンや少年探偵団の面々、周囲の人々が彼女を変えたのだなと強く感じる。その姿は『黒鉄の魚影』における灰原にも重なるものがきっとあるはずだ。

 ディープなコナンファン、灰原フリークも本作は必見だ。特に注目してほしいのはオープニング。劇場版シリーズでは恒例のCGを使用したタイトル映像は『黒鉄のミステリートレイン』仕様となっていて圧巻だ。そして通常はコナン/工藤新一が担当するキャラクター紹介のナレーションを、本作では他でもない灰原哀が読み上げている。果たしてどんなコメントに仕上がっているのか。ぜひ注目していただきたい。

 『灰原哀物語』でも何度もピンチを迎え、その度にコナンたちと乗り越えてきた灰原だったが、『黒鉄の魚影』はそれを凌駕する危機に直面することが特報や予告編で示唆されている。灰原がこれまで辿ってきた道程を『灰原哀物語』で振り返れば『黒鉄の魚影』への期待も一層膨らむはずだ。

■公開情報
TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』
全国公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
脚本・構成:宮下隼一
音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ、林原めぐみ、緒方賢一、堀之紀ほか
配給:東宝
製作:トムス・エンタテインメント、読売テレビ、小学館
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

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