日本のヒーロー作品は世界に通用する? 『ヒロアカ』は実写化の法則を生み出す試金石に
そういった模索の中で、見えてきた方程式はあるのだろうか。
「『今際の国のアリス』や『キングダム』はリアルとファンタジーのバランスがよかったと思います。逆に『るろうに剣心』は漫画的なケレン味を削ることで、ファンタジーテイストの時代劇として力技で成立させた。原作にあった必殺技を叫ぶシーンを減らし、漫画的な様式美を封印することで成功した、難しいバランスで成り立っている作品だったので、他の作品でもこのやり方が通用するかというと難しいと思います。2023年にNetflixで配信される『幽☆遊☆白書』や『ONE PIECE』でどういうことができるか、一本一本試されるんだと思います。そうやってどんどん作品数は増えていく中で、一番気になるのは『鬼滅の刃』がどのタイミングで実写化されるかですが、あの作品に関しては、アニメーションじゃないと成立しない表現だと思っています。漫画・アニメで刀を振ったら水の流れが出てくるシーンがありますが、そういうシーンは様式美で見せているので、歌舞伎や大衆演劇に近い。近年は、2.5次元舞台の評価が高いですが、実写化の場合は、観客が想像で補える部分と、映像で表現しないと成立しない部分、その差をどう埋められるのかが今後の課題になってくると思います。ディズニープラスでは『ミズ・マーベル』などのマーベル作品、Prime Videoでは『ザ・ボーイズ』が作られており、海外の映画やドラマでは、スーパーヒーロー作品のノウハウが完成しています。そのノウハウを『ヒロアカ』がどう取り入れて、日本流に咀嚼するか。例えば『るろうに剣心』はクリストファー・ノーランの『バットマン』3部作からすごく影響を受けています。ヒーローものをリアルでシリアスに描くノウハウが『ダークナイト』で完成し、犯罪映画の形式を用いることで、現実に近い物語としてヒーロー映画を描けるようになった。対して『ヒロアカ』はマーベル映画に近い作りになるかと思うのですが、ほとんどファンタジーに近いマーベル映画的なものを日本の映像作品にどう取り入れるのかの試金石となるのは、間違いないと思います」
『ヒロアカ』は日本オリジナル漫画実写化の成功の法則を生み出す試金石となりえるか。ひとまずは、次の新たな発表を待ちたい。
参考
https://about.netflix.com/en/news/netflix-boards-my-hero-academia-feature-film-from-legendary-entertainment