たまには旧友と語り合うのも悪くない 『離ればなれになっても』は年の瀬に観たい一作に

 ただし、「素晴らしい映画に出会えた!」と気持ちは昂っているが、筆者は男性であり、本作の軸にあるのも“男性の友情”だ。正直、女性が観たら共感できるかどうかはわからない。例えば男性目線で見れば、紅一点の女性・ジェンマに惚れる理由も、ジェンマに不満を抱いてしまう気持ちもわかる。最初は情熱的で、夢を語り合った女性が、次第に安定を求めてしまい、昔のような輝きがなくなってしまう……。そんな男同士が居酒屋で語り合うようなステレオタイプな女性像がジェンマ(の一部)だった。女性に対して配慮がない、ということではないが、女性目線で観れば筆者の意見と全く異なることは全然不思議ではない。

 それでも、「本作は素晴らしい」と言わせてほしい。友情とは素晴らしいのだ。小恥ずかしいから「本作を観て連絡した」とは言えないが、LINEの下の方から昔の久しぶりの連絡先を引っ張り出してテキストを打ち始める。近況報告もいいけれど、昔楽しかった思い出でバカ騒ぎしたい。そんな瑞々しい感情を思い起こさせてくれる映画だった。年末に観て、年始に友達と会う約束をしてみてはどうだろうか。

 3人の男が集まったとき、作中で何度も語られる素晴らしいフレーズで乾杯していたのが印象的だった。そのフレーズを持って本稿を締めたい。

「心を熱くするものへ」乾杯!

映画『離ればなれになっても』本予告映像

参照

※ 『離ればなれになっても』プレス

■公開情報
『離ればなれになっても』
TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
音楽:二コラ・ピオヴァーニ
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ、ミカエラ・ラマツォッティ、キム・ロッシ・スチュアート、クラウディオ・サンタマリア
提供:クラシコム
配給:ギャガ
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
原題:Gli anni più belli/2020/イタリア/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/135分/字幕翻訳:岡本太郎
©2020 Lotus Production s.r.l. – 3 Marys Entertainment
公式サイト:gaga.ne.jp

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