『舞いあがれ!』『silent』『月の満ち欠け』 目黒蓮が告白シーンで見せるバリエーション
それに対して、よりリラックスした表情でさりげない告白が描かれたのが『silent』(フジテレビ系)での高校時代のシーンだ。下校中の想(目黒蓮)に駆け寄り、告白した紬(川口春奈)の声がイヤホンから流れる音楽にかき消され“なかったもの”にされたかに思えた直後、不意に想から告げられた「青羽、好き。付き合って」は、どちらから切り出していようがそうなるしかない必然性に満ちており、本当にナチュラルだった。互いに想い合っていることがもう嫌と言うほど伝わっているからこそ、気負いすぎないごくごく自然な告白になったのはもちろんのこと、聴力に関係なく、相手のリアクションを引き出すために言葉を用いる想元来の性質があの告白シーンの空気感にも結びついていたのではないだろうか。
『silent』相反する苦しさと愛おしさを涙ながらに訴える目黒蓮 最終話に向け決断へ
好きだからこそ、そばにいるのがつらい時もある。紬(川口春奈)と湊斗(鈴鹿央士)がかつてそうであったように、紬と想(目黒蓮)にもま…
それ以降も想としていくつもの感情表情を見せ続けてくれている目黒。8年ぶりに再会し、当時の「好きな人がいる」という別れの言葉の真意を紬に伝える際、“好きな人”は紬のことだったと打ち明けるその指先は小刻みに震えていた。時間を超えて紐解かれる互いの想いが一気に押し寄せる中、あの時そうするしかなかった自身の想いを託しながら紬のことを困ったような顔で覗き込む想の切なく優しい眼差しには彼の愛情深さが凝縮されていた。
そして、最終話直前にして、紬のことを好きになればなるほど自分だけに起こった変化の大きさを想が再認識せざるを得ない、そんな彼ら2人の合わせ鏡のような宿命が描かれる。自分がなくしたもののことで周囲を戸惑わせたり気を遣わせないように、そればかりを優先してきた想が言う「好きになるほど辛くなっていく。声が聴きたい」という切実な言葉ほど胸を締め付けられるものはなかった。その言葉を発すれば紬が困ることも、きっと泣いてしまうこともわかっていながら、それでも口にせずにはいられなかった想のこれまでの自問自答や葛藤、逡巡がダイレクトに伝わってきて途方もない思いがした。
様々な作品内で相手を想う愛情表現や感情のバリエーションを丁寧に紡いでいる目黒の熱演を引き続き見逃さずに目に焼き付けたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK