『ストレンジ・ワールド』は“多様性”を丁寧に紐解く ディズニーが込めたメッセージとは?

 ディズニー最新作『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』が11月23日に劇場公開された。本作にはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品初のオープンリーゲイキャラクターが登場。その他にも白人男性、黒人女性、片足のない飼い犬、アジア系女性など様々なアイデンティティを持ったキャラクターも登場し、ディズニー作品において最も多様性を重視したキャラクター設定が採用されている。

 本作では“多様性”や“共生”の重要性を様々な視点で分かりやすく観客へ届けているが、中でも主人公のサーチャー・クレイドとその父・イェーガー、そして主人公の息子であるイーサンという3世代に渡る男性キャラクターの異なる価値観は身近で1番分かりやすいメタファーだ。サーチャーは危険を顧みず己の力と考えのみを正義として突き進む、世界的に有名な冒険家であるイェーガーとは真逆の価値観を持っている人物。「クレイド家の男たるもの自分のようであれ」と語る父に反発し、自身は農業を営み外へは出て行かず、息子のイーサンには「父のような冒険家になってほしくない」という思いから農園を継いでほしいと願う。

 しかしイーサンは父の望む自分にしっくりきておらず、新しい世界や未知の生物と出会い、全てをなぎ倒すような勢いのあるイェーガーとはまた違った冒険家になることを夢見るようになる。父が息子に自分の理想を押し付け、息子がそれに反発し親子関係にヒビが入ってしまうというのはよくある展開だが、本作のキーとなるのはZ世代を代表する、オープンリーゲイのイーサンだ。

 イーサンは作中、仮想敵が存在せずあらゆる生物と共生するカードゲームで遊んでおり、それがそのまま自己の価値観にも反映されている。そのためそれまで人類が知らずにいた未知の生物や環境を脅威と見なさず、初めて出会う生き物にも友好的に接することができるのだ。一方、サーチャーやイェーガーは「よく分からないもの」や「自分たちの生活を脅かすかもしれないもの」を恐れ、敵と認識してしまう。そんな2人に対しイーサンが「悪役がいないとだめなの?」と問うシーンも存在し、戦いを経て何かを成し遂げるという価値観と、戦わずに共生の道を選ぶ価値観の対比が分かりやすく描かれている。世代が異なれば価値観も異なる3人だが、イーサンの「相手を知り受け入れ、話しをする」という価値観がサーチャーを変え、父であるイェーガーと真正面から話しをすることにより関係性が修復されていく。

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