『天使にラブ・ソングを2』はなぜ愛され続ける? 原題『Sister Act』から紐解く
特筆すべきは、この物語の核となっているのは、やはり音楽であるということだ。生徒たちは、大人たちに対して反抗的な態度を繰り返してとっていたが、しかし、楽しいことに対しては何よりも積極的な一面も持ち合わせていた。そして、彼ら、彼女らにとって、その楽しいことの一つが音楽である。序盤、みんなで屋上に集まってラップバトルするシーンが象徴しているように、生徒たちにとって音楽は、自身のアイデンティティを自分らしく表現する手段の一つとなっている。
また、女子生徒のリタ・ワトソン(ローリン・ヒル)の「あんたのラップがロックなら/私のラップはジャズスタイル」といったラップは、彼女たちが、何にも縛られることなく自由に音楽を楽しんでいる様子を伝えている。そして、そうした音楽の楽しみ方は、デロリスの先進的な音楽観と非常に相性が良い。デロリスは、音楽を通して一人ひとりの可能性を見出しながら次第にクラスを一つにまとめ上げていき、物語の後半では、コンクールへの出場という大きな目標を共に目指していくことになる。
ここから先の展開についてはネタバレとなってしまうため詳細な記載は省くが、登場人物たちが自由に音楽を楽しむ姿はとても輝かしく、また、一人ひとりの生徒が、音楽による交流を通して、自発性・積極性を獲得したり、自分以外の他者をより深く理解したりしていくプロセスは、いつ何度観ても強く心を動かされる。どれだけ時代が経っても、音楽が誇る根源的な可能性は不変であり、それが、このシリーズが長年にわたり愛され続けている理由でもあるのだろう。今回の『金曜ロードショー』を通して、この映画を初めて観る10代、20代の人もきっと多いはずで、きっと今作は、そうした世代の人たちにも響くような普遍性を秘めていると思う。
そして現在、『天使にラブ・ソングを…』シリーズの続編の企画が進行中であるという。現時点では企画の詳細は不明だが、ウーピー・ゴールドバーグがデロリス役に復帰し、また、プロデューサーも兼任することが明らかになっている。第1作、第2作から約30年が経った2020年代において、いったいデロリスは、私たちにどのような音楽の可能性を伝えてくれるのだろうか。あれから、私たちの音楽の需要の仕方や、ポップミュージックシーンの様相も大きく変化したため、デロリスの教えも、現代版にアップデートされていることは間違いないはず。期待して、続報を待ちたい。
■公開情報
『天使にラブ・ソングを2』
日本テレビ系にて、12月9日(金)21:00~22:59放送
※放送枠5分拡大
監督:ビル・デューク
製作:ドーン・スティール、スコット・ルーディン
脚本:ジェームズ・オア、ジム・クラックシャンク、ジュディ・アン・メイソン
キャラクター創造:ジョセフ・ハワード
製作総指揮:ローレンス・マーク、マリオ・イスコヴィッチ
共同製作総指揮:クリストファー・メレダンドリ
音楽:マイルス・グッドマン
音楽監修:マーク・シャイマン
出演:ウーピー・ゴールドバーグ(声:中村晃子)、キャシー・ナジミー(声:さとうあい)、ジェームズ・コバーン(声:小林清志)、マギー・スミス(声:藤波京子)、バーナード・ヒューズ(声:村松康雄)、メアリー・ウィックス(声:河村久子)、ウェンディ・マッケナ(声:矢島晶子)、ローリン・ヒル(声:高山みなみ)
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