なぜ平氏も源氏も朝廷を滅ぼさなかった? 『鎌倉殿の13人』で理解する、権威の内実

 いよいよ終わりが見えてきた『鎌倉殿の13人』(NHK総合)。『新選組!』、『真田丸』に続く、三谷幸喜が脚本を手掛ける大河ドラマとなる本作は、平安時代末から鎌倉時代を舞台に、北条義時(小栗旬)が血で血を洗う権力闘争を重ねていく姿を描いた歴史劇だ。

 源頼朝(大泉洋)亡き後、義時は、二代目鎌倉殿(将軍)となった源頼家(金子大地)を13人の宿老が補佐する合議制によって坂東武者をまとめようとする。しかし、宿老同士の間には絶えず不協和音が生まれ、反旗を翻すものが続出。宿老たちを次々と粛清・追放していく義時だったが、ついには実の父である北条時政(坂東彌十郎)とも対立することに……。

 『鎌倉殿の13人』がドラマとして評価されている理由として、登場人物の行動原理に破綻がなく、視聴者から見て、不自然な動きをする人間がいないことが挙げられるだろう。歴史書『吾妻鏡』を下敷きにして史実をなぞりながら、行間を作家の想像力で埋めていくことで鎌倉時代の話を令和の時代に生きる私たちにも理解できる普遍的な物語に落とし込む三谷の手腕は実に見事だ。各登場人物の背後には、自身が背負っている家族と家制度を守らなければならないという使命感があるのだが、その使命感から生まれるプライドが理由で人間関係がこじれて疑心暗鬼になり、最後は殺し合いに発展していく姿を、本作は繰り返し描いている。

 やがて物語は、頼家亡き後に三代目鎌倉殿となった源実朝(柿澤勇人)の跡目争いをめぐり大きく動き出す。宿老の和田義盛(横田栄司)が起こした反乱(和田合戦)で多くの死者を出したことに実朝は疲弊し「私は父上や兄上のように強くない。だから、強きお人にお力をお借りする」(第41回)と言い、朝廷の後鳥羽上皇(尾上松也)を頼るようになる。

 最新話となる第43回「資格と死角」では、円成寺で修行をして、鶴岡八幡宮の別当となった頼家の遺児・公暁(寛一郎)が、鎌倉に戻ってくる。次の鎌倉殿は自分だと思っていた公暁だったが、実朝は朝廷の血筋にあるものを養子としてむかえ、後継者にしようと考えていた。その話を聞かされた三浦義村(山本耕史)は「いずれ鎌倉は西のやつらに乗っ取られるぞ」と義時に憤る。

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