『ぼっち・ざ・ろっく!』CloverWorksによる秀逸なアニメ化 “挑戦”に溢れた魅力を紐解く

 そして第4話では中盤に、ひとりがSNSを勧められた時に登場する承認欲求モンスターの存在を取り上げたい。ひとりの妄想の産物であり、原作では1コマしか登場していないが、アニメではさらに掘り下げられている。倒れたひとりが極端に精神が崩壊する、壊れたビデオの映像のような画面を経て、卑屈さの象徴であるツチノコ、そしてゴジラのような承認欲求モンスターが、ひとりの妄想内で暴れ回るさまが描かれていく。

 この承認欲求モンスターの登場中は白黒で鉛筆画のような映像となり、あきらかに背景美術なども異なっている。おそらく初代『ゴジラ』の映画を、きらら風にアレンジした結果なのだろう。

 また、コミュニケーションが苦手で、他者のなんでもない一言にショックを受け、ひとりの顔面が崩壊していく様も多種多様であり、大きな話題を呼んでいる。こういった挑戦的な描写は、ひとりが内向的で、そして人間関係について考え過ぎてしまうほどに想像力豊かな少女であることを示している。

 それでいながらも、やはりCloverWorksらしい写実的、あるいは動きの面白さを追求することも忘れていない。キャラクターの動きの繊細でリッチな作画表現に加え、舞台となるライブスタジオの細かい背景美術、あるいは第4話における下北沢の背景美術も現実に沿ったものだった。時には実写映像も挿入されており、アニメらしさという枠組みに捉われない挑戦と工夫に満ち溢れている。

 リアルな背景描写があり、デフォルメされたキャラクターがいるからこそ、そこから外れた独特な表現が、さらに驚きと面白さを助長しているのだろう。これらはまさに、アニメの面白さを広げる挑戦だとして、高く評価したい。

 最後になるが、今作は全体の作風が面白いながらも、各話ごとにその魅力が異なっていく。絵コンテ・演出を務めた人物によって、挑戦の形が変わっているのだ。『NEW GAME!』などきらら系作品の監督を務めた経験もある藤原佳幸のように実績のある演出家から、シリーズ初絵コンテを手がけた刈谷暢秀、そのほか川上雄介、山本ゆうすけなどの将来のスター監督になるかもしれない若手に至るまで、その演出能力の高さと各話の個性に楽しませてもらっている。

 秋アニメを観ていると実験的作風の『ポプテピピック』や、洋画的な写実性にこだわった『チェンソーマン』など、アニメ表現はここまで多様か、と感慨に耽る。今期の好きな作品のキャラクターや物語に注目することから少しだけ視線を変えて、その映像表現で何に挑戦しているのかに注目すれば、大きな発見が得られることは間違いない。

■放送情報
『ぼっち・ざ・ろっく!』
TOKYO MXほかにて、毎週土曜24:00〜放送
MRT宮崎放送にて、毎週土曜25:28〜放送
MBSにて、毎週土曜27:08〜放送
RKB毎日放送にて、毎週木曜27:00〜放送
AT-Xにて、毎週月曜22:30〜放送
ABEMAにて、毎週土曜24:00〜地上波同時配信
各配信プラットフォームにて、毎週火曜12:00〜順次配信
原作:はまじあき(芳文社『まんがタイムきららMAX』連載中)
監督:斎藤圭一郎
出演:青山吉能、鈴代紗弓、水野朔、長谷川育美
シリーズ構成・脚本:吉田恵里香
キャラクターデザイン・総作画監督:けろりら
副監督:山本ゆうすけ
ライブディレクター:川上雄介
ライブアニメーター:伊藤優希
プロップデザイン:永木歩実
2D ワークス:梅木葵
色彩設計:横田明日香
美術監督:守安靖尚
美術設定:taracod
撮影監督:金森つばさ
CGディレクター:宮地克明
ライブCGディレクター:内田博明
編集:平木大輔
音楽:菊谷知樹
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:八十正太
制作:CloverWorks
©はまじあき/芳文社・アニプレックス
公式サイト:bocchi.rocks
公式 Twitter:@BTR_anime
公式 Instagram:@BTR_isosta

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