『エルピス』敵はどこに? “恵那”長澤まさみと“拓朗”眞栄田郷敦が向き合う正しさの代償

 私たちは何と戦っているのか。冤罪を作り出す国、マスコミ、自らの過去、弱さ。あるいはそれら全て。『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系)第4話では、奇襲からの僥倖とそれに続くひとときの小康、そして手痛い敗北が描かれた。

 『フライデーボンボン』で、八頭尾山連続殺人事件の特集が放送される。ギャンブルに打って出た恵那(長澤まさみ)の狙いが功を奏し、番組はそれまでになかった視聴率を記録。恵那の暴走は歓声とともに迎えられ、反対していたはずの局幹部の後押しも得た。それまでの無関心が嘘のように状況は一変した。

 松本(片岡正二郎)が容疑者とされた根拠は、血液型の一致、アリバイがないこと、家出少女を匿っていたこと、自白、犯行時刻に現場から自転車で逃げ去る男を見たという目撃証言だった。しかし、殺された井川晴美(葉山さら)の遺体は水に浸かっていたためDNA鑑定はできておらず、近隣住民による別の目撃証言(髪の長い男)もあったが、それらはなかったことにされていた。新たに八頭尾山で起きた殺人事件の遺体は、16年前と共通する特徴があったが、県警が捜査に本腰を入れる様子はなかった。恵那たちは、松本を見たと証言した西澤を独自に取材しようとする。

 冤罪特集は2度、3度と続き、核心に迫っていく恵那と拓朗(眞栄田郷敦)。そこに立ちはだかったのが再審の壁だった。「開かずの扉」と呼ばれる再審請求は、そのほとんどが棄却される。拓朗の母で弁護士の陸子(筒井真理子)によると、これまで関わった再審請求は「全滅」で、請求して10年後に棄却の決定がされたものもある。「獄中で亡くなった人おるもん。ぶっちゃけそれが狙いなんちゃうやろか」と陸子。そして、松本の再審請求が棄却されたとの知らせがもたらされる。

 偶然とは思えないタイミングの一致。議論の俎上に載った事件をふたたび葬るかのように、松本の無罪を証明する機会は潰えた。「疑わしきは罰せず」が原則の刑事裁判で、いったん刑が確定すれば、厚い制度の壁に守られて裁く側の過誤は不問に付されるという矛盾。「敵はどこにいるかわからない。お前らはジャングルで棒切れ振り回してるバカなガキと一緒」という村井(岡部たかし)の言葉が脳内で再生され、恵那は今になって自分の甘さを痛感させられた。

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