『窓辺にて』玉城ティナのあどけなさが観客を虜に 純真な笑顔が“大人の恋”に華を添える

 『愛がなんだ』『街の上で』をはじめ、等身大の恋人たちの愛を描く作風が根強く支持されてきた今泉力哉監督の最新作『窓辺にて』が公開中だ。

 “ちょっぴり可笑しい大人のラブストーリー”のキャッチコピーにふさわしく、本作に登場する人物は全員が少し不器用で、そして何より温かい。「好き」という感情に出会うと誰もがいつもの自分から少し外れてしまうように、それぞれが恋愛という大きな渦の中で振り回されていく様子がなんとも愛おしい作品だった。

玉城ティナが演じる子供と大人の“狭間”

 目立つわけではないのに不思議と華のある主人公・市川茂巳を稲垣吾郎が見事に演じ、淡々と進んでいくかのように見えるストーリーは徐々に深みを増していく。今泉監督作品の常連も含めた豪華キャストが揃う中、特に目に留まったのは高校生作家・久保留亜役の玉城ティナの演技である。

 留亜の受賞作『ラ・フランス』のモデルに会うことをきっかけに市川と留亜の交友が始まるのだが、留亜の性格のとっつきにくさは授賞式での質疑応答であらわになる。気怠げな態度で記者を困らせる留亜は一見して非常識にも見えるが、心を開いた相手に対しては素直な一面を見せるところが微笑ましい。

 留亜の高校生特有のあどけなさについて、監督は初日のトークショーで服装を中心としたスタイリングも含めてこだわったと語った。記憶に残る赤いレトロなワンピースに引っ張られすぎず、大人と子どものまさに狭間。しかし精神面で言えば、恋愛を抜きにしてもまだまだ留亜は幼い。そんな彼女の「感情のセーブができない」一面の表現は、玉城の演技力の高さあってこそ成り立っていた。

 留亜は振り回す側にいるようでいて、本当はとても繊細な人物なのだろう。自分の作品が届かない相手に対しては誠実に向き合う必要性を感じていないし、恋人の優二に対してはきちんと振り回される。

 このアンバランスな弱さは大人と子どもの中間地点に立つ彼女だから、というように見えて実は「好き」を認めた相手に対して、恋を知る全観客に当てはまる部分なのではないか。

 恋が引き寄せる混乱への反応や自分の予期しない自分を恋愛の最中に見つけていくというのはよくある話だ。留亜という存在のベースはそのままに、恋によって生まれる多面的な少女の姿を見せた玉城の表現力に拍手を送りたい。恋に感情的な留亜と恋がわからなくなっている市川との対比も2人をさらに良いバディへと仕立て上げていたと感じる。

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