『舞いあがれ!』赤楚衛二が大切に育んだ貴司の内面 優しい雰囲気はお茶の間の癒やしに

 『石子と羽男』では特にその演技が際立っており、硝子(有村架純)に対する不器用でまっすぐなアプローチも、自分を犠牲にしても大切な人を守ろうとする正義感溢れる行動も付け焼き刃ではなく、「大庭ならそうするだろうな」という納得感があった。

 そんな赤楚にとって、『舞いあがれ!』で演じる貴司はぴったりの役柄だ。幼少期の貴司(齋藤絢永)は、病弱でなかなかクラスに馴染めない舞(浅田芭路)をさりげなく気遣う優しい男の子。両親ゆずりの明るい性格でクラスでも人気者だったが、どこか達観していて周囲と歩調を合わせすぎてしまうきらいがあった。そんな貴司は古本屋の「デラシネ」で店主・八木(又吉直樹)が綴った自分の気持ちを代弁してくれるかのような詩に出会い、言葉の魅力に惹かれる。

 あれから10年後、社会人になった貴司は、変わらぬ柔らかい物腰で古本屋の片隅に佇んでいた。人力飛行機の魅力について語る舞の話に、うんうんと頷きながら耳を傾ける貴司はまさに“心のオアシス”。その温かい眼差しや、「よかったな。ええもんに出会えて」という優しい語り口調になぜか泣けてくる。それが恋愛感情かどうかはわからないが、少なくとも幼なじみとして舞のことを大切に思う純粋な気持ちに心を動かされるからだろうか。

 同時に、自分のやりたいことに向かって突き進む舞にどこか複雑な心境を抱いているような気がした。もやもやとした気持ちを内に留めてしまう貴司だから、ちょっとした表情の変化も見逃せない。まさに“目は口ほどに物を言う”を体現する赤楚の力を最大限活かした役柄といえるだろう。赤楚が今、大切に育てている貴司の内面がこれからどんどん溢れ出てくるのが楽しみだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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