『舞いあがれ!』には福原遥らの“言葉にならない熱”がある 詩のようだった“説明セリフ”

 “朝ドラ”こと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第4週「翼にかける青春」は舞(福原遥)が18歳になり大学に入学、人力飛行機のサークル・なにわバードマンに入部し、航空工学の勉強と人力飛行機づくりに励む。

「夢で始まり 情熱を結集し こころ豊かな社会をつくる」

 これは第17話に登場した会社のキャッチコピー。舞の父・浩太(高橋克典)が会社のCIを考えているときに目にした他社のものだが、このコピーがまさに第4週以降のなにわバードマン編を象徴しているように思える。舞の「夢で始まり」、サークルの部員の「情熱を結集し」て、「こころ豊かな」人力飛行機をつくる。

 三つ子の魂百までというように、子供のとき(浅田芭路)、模型飛行機を作って飛ばしたことが舞のなかに息づいている。スケッチブックに好きな飛行機の絵をたくさんスケッチしている舞。ばらもん凧に描いた絵も上手だったが、スケッチの絵もうまい。基本、手先が器用なのだろう。人力飛行機のパーツも最初はおぼつかない手つきながらすぐにコツを掴んでいる。

 子供の頃の名残といえば、部室を見学にいった日、主翼に魅せられてつい触れそうになったとき「触ったらあかん!」と由良冬子(吉谷彩子)に一喝されたことが、うさぎのスミちゃんを「触ったらあかん!」と久留美(大野さき)に注意されたことと重なっている。舞は基本、行儀のいい人物であるが、夢中になると我を忘れるところがあるようだ(うさぎに関してはそこまでのことでもないだろうが)。そして、器用にすぐなんでもできるわけではないが、真面目に努力して丁寧な仕事をする。

 舞のこの特性を、部員たちはすぐに理解する。とりわけ由良。最初の出会いはあまり印象のよくないものである。由良の声に驚いた拍子に舞は主翼を壊してしまった。もしかして由良、こわい先輩? と思いきや、たちまち舞の憧れの存在となる。

 パイロットとしてトレーニングを続ける由良は、ストイックでかっこよく、他人に厳しいのは自分に厳しいから。常に真剣なのだ。だから真面目にやっている人のことはよく見ていて労ってもくれる。舞は最初、主翼の精密な美しさに一目惚れしたようだが、由良の崇高な態度にも惚れてしまっているように見える。

 大学でサークル活動というと、そこに恋愛が絡んでくることが少なくない。少女漫画や“スイーツ映画”などはたいていそう。でも、『舞いあがれ!』は色恋が介入しない。純粋に人力飛行機を飛ばすという行為に部員たちが邁進していて、ちょっと生真面目過ぎないかと思うほど。唯一、玉本(細川岳)が飲み会で潤いがほしいと恋がらみの話題を振っていたが、笑いのネタのようだった。ただ、部長の鶴田(足立英)は由良のことを想っていて、由良は恋よりも人力飛行機に乗って飛ぶことしかいまは考えられないことは少しだけ描かれた。

 残念ながらなにわバードマンは今年のイカロスコンテストに出ることが叶わず、その代わり、記録飛行に挑戦することになった。そしてテスト飛行当日――。

 残念ながら、テスト飛行は失敗する。あんなに夢に向かってがんばって、輝いていた由良が堕ちて壊れたコクピットのなかで苦しい顔をしている。そして全治2カ月の骨折で、記録飛行を断念せざるを得なくなる。苦い展開である。これをきっかけに舞がパイロットをやることになり、彼女の奮闘がはじまるのだが、由良のことを思うとなんとも切なくなる。

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