『どうする家康』はコメディ色の強い大河ドラマに? 古沢良太と三谷幸喜の方向性の違い

 このオリジナルドラマ3作と、竹富健治の漫画を原作とする中学教師・鈴木章(長谷川博己)が主人公の学園ドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)が、2010年代の古沢良太の代表作だが、どの作品にも共通するのが、ジャンルに対する強い批評性と社会風刺を交えたブラックな笑いだろう。

 構成も毎回、工夫されており、一話の中で物語が二転三転し、最後は意外な場所に着地する。信用詐欺師が主人公の『コンフィデンスマンJP』が顕著だが、何が本当で何が嘘かわからない状態が続くのが古沢脚本の特徴だ。それが手法の枠を超えて、人生観や哲学の領域まで高められているのが、彼の作品の面白さなのだが、そうでありながら「なぜか後味が良い」というのが、古沢作品が愛される理由だろう。

 上記の過去作を踏まえた上で『どうする家康』の展開を想像すると、コメディ色の強い作品になりそうだが、前述した磯智明は「本格的な大河ドラマになる」と語っている。その意味でも比較したくなるのは、現在『鎌倉殿の13人』を書いている三谷幸喜との資質の違いだ。

 フジテレビのコメディドラマで頭角を現したという意味で、古沢良太は三谷幸喜のフォロワーと言える脚本家だ。そう考えると『どうする家康』も三谷脚本の『真田丸』のような王道大河ドラマ路線を踏襲しそうだが、クラシカルな笑いを志向する三谷に対して、ジャンル自体を破壊しかねない辛辣なパロディを繰り広げる古沢とでは笑いの方向性が大きく異なる。そのため、よりコメディ色の強い大河になるのではないかと期待している。

 なお、『どうする家康』は古沢にとっては初の時代劇となるが、2023年1月27日には東映70周年記念となるオリジナル脚本の映画『レジェンド&バタフライ』の公開が控えている。本作は、木村拓哉が織田信長を演じ、綾瀬はるかが濃姫を演じる時代劇で、監督は大河ドラマ『龍馬伝』や映画『るろうに剣心』シリーズで知られる大友啓史が務める。『どうする家康』の放送が始まってすぐの公開となるのは、たまたまだろうが、同じ時代を描いた作品であるため、見比べるのもまた楽しみである。

参考

※ https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202112030001032.html

※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。
誤:ALLWAYS 三丁目の夕日
正:ALWAYS 三丁目の夕日

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、2023年放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

関連記事